通信から始まる未来づくり――ハナセルがマラウイに届ける「自立の力」
マラウイの子どもたち。ハナセルの事業利益によって提供される学校や給食は地域の子どもたちの学びと成長を支えている
<1992年、マラウイを訪れた創業者が現地の住民からかけられた言葉「自分には何もいらない。この町の若者に仕事を与えてほしい」。その一言が、支援活動の原点となった。通信サービス「ハナセル」はその事業利益をもとに、マラウイに雇用・教育・食の支援を届けている>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
通信事業と社会貢献が「表裏一体」の支援循環
HanaCell(ハナセル)は、海外在住日本人や訪日外国人向けに通信サービスを提供するMobell Communications Ltd(モベル・コミュニケーションズ・リミテッド)の中核ブランド。日本語でサポートを行い、アメリカや日本で使えるSIM・eSIMを通じて、国際的に活躍する日本人の通信を支えている。だが、同社の真価は通信サービスにとどまらない。マラウイ共和国で進めるSDGs活動こそ、ハナセルを特別な存在にしている。
その社会貢献の原点は、創業者トニー・スミス氏が1992年にマラウイを訪れた際の体験にある。旅先で出会った住民から「自分には何もいらない。この町の若者に仕事を与えてほしい」と言われたことが、同氏の価値観を大きく変えた。帰国後、自ら寄付活動を始め、2006年には英国で慈善団体「Krizevac Project(クリゼバック・プロジェクト)」を設立。
翌07年、マラウイのチロモニ村に社会的企業「Beehive(ビーハイブ)」を設立し、建設・縫製・ITなど多分野で現地雇用を創出した。これまでに7000人以上の雇用を生み出し、12年には学校を開校、16年には給食支援も開始。教育・雇用・食の三分野で持続的な支援を展開してきた。

現在、ハナセルを含むモベルの事業で得た利益はすべて、クリゼバック・プロジェクトを通じてマラウイでの活動に活用されている。つまり、ハナセルのサービスを利用すること自体が、マラウイの持続可能な発展を支援する行為につながっているのだ。現・代表取締役社長のデクラン・サマーズ氏はこう語る。
「私たちは、寄付を一時的な善意で終わらせず、事業を通じて継続的に支援できる仕組みをつくりました。通信事業と社会貢献は、当社では表裏一体です」
社員全員がこの理念を共有していることも特筆すべき点だ。社員ハンドブックの冒頭には、「私たちの主な目的は、世界で最も貧しい地域の一部で雇用・教育・食を支援すること」と明記されている。実際に現地を訪問する社員も多いという。
「寄付」ではなく「自立」を育てる――現地とともに歩む未来
現社長のサマーズ氏がマラウイに初めて足を踏み入れたのは2012年のこと。当時はまだモベルに所属しておらず、創業者スミス氏に誘われて2週間滞在した。滞在中、現地の人々からはなぜか「また戻ってくるよね」と何度も声をかけられ、それが心に残ったという。帰国後にチャリティ活動への思いが強まり、自身の会社を売却してマラウイに戻り、3年間ボランティアとして働いた。その後モベルに加わり、現在は日本支店を拠点に経営を担っている。
「現地で出会った人々のまっすぐな生き方に心を動かされました。支援ではなく、一緒に未来をつくるという感覚でした」(サマーズ氏)
その言葉を象徴する出来事がある。マラウイで手作りのホットソースを売って生計を立てていた男性がいたが、徒歩での訪問販売には限界があった。そこでサマーズ氏は、イギリスから寄付された頑丈な自転車を彼に提供した。すると行動範囲が広がり、売り上げが安定。子どもたちの教育費まで賄えるようになった。さらに後年、彼のソースはブランド化が進み、「Woza Woza Hot Sauce(ウォザ・ウォザ・ホットソース)」として地域に知られる商品に育った。
「一台の自転車が、一つの家族と地域を変えた。これこそが『支援が継続する仕組み』の力です」(サマーズ氏)

現在、マラウイでは農業以外の産業が乏しく、インフラや雇用機会の不足が深刻な課題だ。同社はこの課題に応えるため、2025年11月に製粉所を稼働させ、小規模農家と提携しながら食料自給と収入向上を目指す。また、英語が公用語である利点を生かし、将来的にはマラウイ現地で英語カスタマーサポートを展開する構想も進行中だ。通信事業と地域支援をさらに直接的に結びつける挑戦である。
同社の支援は、慈善団体の立ち上げから教育支援、給食活動へと着実に広がり、いまは製粉所の稼働へと歩みを進めている。単なる寄付ではなく「雇用を生む支援」に軸足を置き、地域の自立を後押しするこの取り組みは、SDGsの理念を体現する実践例としてアフリカの大地に根づきつつある。
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