コラム

「ウイグル話法」とは何か?──リベラルは中国に甘い、という誤解

2021年03月02日(火)11時10分

新疆ウイグル自治区にある強制収容所の門。中国政府はこれを再教育施設だと言っている Thomas Peter-REUTERS

ウイグル話法って何?

「ウイグル話法」を知っているだろうか?保守界隈やネット右翼界隈(以下保守派)に少しでも知識・関心のある諸兄なら聞いたことがあるであろう。ウイグル話法とは、日本内外で人権軽視とされる舌禍を保守系の政治家や私人等が行い、世論から猛烈な批判を受けると、その対抗言説として必ず「ならばウイグル問題をなぜ批判しないのか」として、保守派が主にネット上で持ち出す言説の事である。

記憶に新しいところでは、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会前会長の森喜朗氏の女性差別発言に対するバッシングに対し、「森氏の女性差別を批判するのならば、同じく中国のウイグルでの人権問題を批判しないのはおかしい」という言説が噴出した。要するにある保守系の人物の人権に関する舌禍への批判への対抗として、ウイグルの人権状況への無批判を持ち出す。これがウイグル話法である

ウイグル話法の例

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                                                                                                                      (筆者制作)

上記はあくまで私の創作だが、このように「~ではなぜ中国のウイグルでの人権問題を批判しないのか」という理屈で展開されるウイグル話法は、保守派における進歩派・リベラル攻撃の伝統的な一本槍戦法である。

人権問題に厳しいとされる日本国内外の進歩派・リベラルは、執拗に人権擁護を叫ぶが、その一方で中国のウイグルでの人権弾圧に対して全く無関心であり、無批判である―という世界観がウイグル話法の根幹にある。

このようにウイグル話法は、現在保守派の中でお家芸になっており、ネット上では恒常的に観察することができるばかりか、現在では右派系の国会議員までこの論法を採用している場合が散見される。ウイグル話法は、保守派にとってあらゆる進歩派攻撃に転用できる便利な飛び道具になっている。

LGBTに関する人権蔑視や、アイヌ民族の被差別の歴史への無知、低所得者や生活保護受給世帯への偏見や無理解等が保守系の政治家等から表明され、世論から批判を受けると、かならずウイグル話法の話者は被批判者の擁護に回り、「~ならばなぜウイグルの人権問題や差別を批判しないのか」と続ける。繰り返すように彼らの世界観には、進歩派やリベラルは人権を叫ぶくせに、世界最大級の人権問題のひとつであるウイグル問題については無知・無理解・無批判である―、と思い込んでいるからだ。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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