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在日外国人と日本社会の共生努力を後退させる右派の差別扇動
文化が異なる人々がある地域で急速に増加すると、様々なトラブルが発生するのも事実だ。しかしそこには多分にマジョリティ側の偏見や差別感情が伴う。日本人も行っているようなルール違反であってもクルド人の場合だけ殊更に問題にされる。あるいはクルド人が行っていない犯罪行為もクルド人のせいにされてしまう。単純な知識不足や伝達不足の問題を大げさに問題視する、といったケースが確認されている。
一方、日本クルド人文化協会は、「クルド人は怖い・クルド人はトラブルの種である」という偏見を払拭するために、クルド人コミュニティを地域社会と共生させるための取り組み、例えば地域パトロールやゴミ拾い、あるいはゴミ出しのルール違反などルールを知らないために起こってしまうトラブルを解消するための啓発活動に取り組んでいる。また日本人の支援団体も、言語学習のサポートなどを行ってきている。
共生のためにはマイノリティにばかり努力させるだけではなく、マジョリティ側の理解と包摂の努力も必要だ。まして、SNSで様々なトラブルを大きく誇張して差別を扇動し、共生のための努力を外側から破壊しようとする行動は許されてはならないはずだ。
SNSでも差別扇動
2月18日の川口市・蕨市の反移民デモは、先述の通り「日本第一党」に所属していた人物が主催したものだ。
このデモに対して多数のクルド人や差別に反対する日本人が集まり、「カウンター行動」が行われた。差別主義者のデモを市民の力で封じるカウンター行動はヨーロッパでは当たり前であり、先述の2009年の排外主義デモに対しても小規模ながら行われていた。
2月18日のデモは、カウンター行動の参加者の声が排外主義者のデモを圧倒して終わった。だが、クルド人当事者がデモ隊に対して「日本人死ね」と言ったとされる映像がSNSで拡散されたことで、クルド人差別がさらに広がってしまっている。「クルド人は日本人を差別している」というのだ。
しかし問題となっている映像をみると「日本人死ね」という言葉は一度も発されていない。当日のカウンターの参加者も、そのような言葉は誰も聞いていないと述べている。映像に残されているのは、差別主義者は「恥を知れ」「精神病院に行け」という言葉であった。
外国人との共生を目指す努力は各地で続いている。先述の通りクルド人以外にも多数の外国人が暮らす川口市では「多文化共生社会の推進」を掲げ、様々な取り組みを行っている。しかしそのような努力も、SNSでの差別扇動によってたちまち危機に晒されてしまう。そのような差別扇動を許さない、日本全体での反差別の取り組みが求められている。
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