コラム

「ツイッター終了」の未来

2022年11月30日(水)10時34分

最近では、Twitterでの同時的受容の欲望を喚起することで視聴者数を増やそうとする取り組みがほとんどのテレビ番組で行われている。たとえば番組専用のハッシュタグを決めて、番組放映時の「実況」することを視聴者に促すのだ。またTwitterユーザーの側でも同時的受容はTwitterを使用する強力な動機の一つとなっているようで、それはTwitterトレンドの上位にテレビドラマやアニメ、バラエティ番組のキーワードが日替わりで並んでいることからも分かる。

Twitterがなくなれば同時的受容の文化も消滅する

もちろん番組実況の文化は、Twitterに始まったことではなく、匿名掲示板文化が華やかだったころから存在する。しかしハンドルネームにせよ自分自身の名前で、ある番組の同時的受容の文化に参画する幸福感を知ってしまった人々が、果たしてアングラな匿名文化に戻ることができるだろうか。Twitterでの「実況」が出来ないのであれば、わざわざリアルタイムで番組を見る動機がなくなり、いわゆる「テレビ離れ」が加速することにはならないだろうか。

このように、もしトレンドに現れるような「Twitter終了」が実際に起こってしまった場合、我々のメディア受容のあり方に大きな影響を与えることが予想される。そしてそれに代わる未来は、今のところ誰にも予想できないのだ。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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