コラム

将棋界を変革したAIは投資の世界をどう変えるか(藤井聡太×藤野英人)

2022年07月01日(金)10時45分

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「お金のまなびば!」より

「絶対に勝てる投資アプリ」に近いものが出来る

藤井叡王が活用する将棋ソフトは、オープンソースで開発され、トップレベルの実力を持ちながら無償で公開されている。「誰もがパソコンさえあれば最高峰のソフトを使える。これから将棋を始める人にとって素晴らしい環境が整っている」と藤井叡王は話す。

では、AIを早くから取り入れた人のほうが強くなるのも速いのだろうか。この問いに対し、藤井叡王は

「環境の差が小さくなった分、取り組み方が問われるようになると思う。ただ、AIが考えている内容を言語化して伝えてくれるわけではないので、AIの評価値と読み筋を見ているだけでは強くなることは難しい」

と答えた。ある程度の棋力がないと自力で理解するのは難しいので、学習や指導には工夫がいるようだ。

AIの登場によって大きく変化した将棋界を見て、藤野氏は「将棋の世界で起きたことは投資の世界でも起きる」と予測する。

「将棋は読み筋があまりに多いので、『AIが人間に勝てることはない』とほんの10年前まで信じられていた。投資でもAIやコンピューターがさまざまな場面で実践化されているが、実社会は将棋の駒数よりもさらに変数が大きいので、『絶対に勝てる投資のアプリ』はまだ出来ていない。だが、いずれかなり近いものができるだろう」

そして、藤井叡王もAIの今後の進歩についてこう予想する。

「ハードウエアもソフトウエアの性能もより上がっていくので、より複雑な実社会においてもAIが優位になる分野は増えていくのではないかと思う」

AI分野が進化するスピードは非常に速く、まさに日進月歩。近い将来、社会にさらなる変革をもたらすことになるだろう。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

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