コラム

リビア攻撃は仏戦闘機の販促デモ?

2011年03月30日(水)16時45分

 2012年の大統領選での再選を視野に、支持率回復を狙ってニコラ・サルコジ仏大統領はリビア攻撃を主導している――そんな見方をひねくれていると思う人もいるかもしれない。だがもっとひどい話がある。今回の軍事行動が、仏ダッソー社のラファール戦闘機の宣伝活動として役立っているというものだ。ヨーロッパ関連のニュースを扱うEUオブザーバーはこう報じている。


 リビアにおけるフランスの軍事作戦を詳細に分析すると、売れ行きの悪いラファール戦闘機(1機6000万ユーロ)の販売促進のために、フランスがこの戦争を利用していることがわかると、軍事アナリストらは指摘する。

 ラファール戦闘機はリビア時間3月19日午後5時45分に、地上攻撃の記念すべき第1発を最高指導者ムアマル・カダフィ大佐の政権側に発射。反体制派の拠点ベンガジの郊外で、戦車4台を破壊した。その攻撃は、米英軍がカダフィの対空基地への砲撃を開始する3時間前に実施された。フランス防衛省は攻撃後、即座にラファール戦闘機の画像を同省のウェブサイトに掲載してPRした。
 
 イタリアの元戦闘機パイロットで軍事アナリストのダビッド・チェンチョッティは、ラファール戦闘機による攻撃は異例だとEUオブザーバーに語った。通常の軍事作戦ではまず最初に、地上攻撃ではなく対空砲撃が行われることが多いからだ。

「フランスの介入は、何よりラファール戦闘機にスポットライトを当てることが目的だ」と彼は言う。「フランス空軍がベンガジ周辺に地対空ミサイル基地がないと判断していたのは確かだろうが、それにしてもこの攻撃はデモンストレーションだったと思う」


 スウェーデンもこの動きに便乗しているように見える。


 ストックホルム国際平和研究所のポール・ホルトゥムはこう言う。「スウェーデン政府がリビアに国産のグリペン戦闘機を派遣するかどうか検討する際、同機の『市場導入の可能性』についても議論されたと思う。だが今回の作戦は、戦闘機そのものの軍需市場よりもむしろ、新型ミサイルや誘導爆弾といった市場にとって興味深いものだったかもしれない」


■カダフィにも戦闘機販売を計画

 ダッソー社の広報は、宣伝のために攻撃を行ったとする考えを「プロパガンダであり、真実ではない」と一蹴する。だが同時に、ラファール戦闘機が今回の軍事作戦に最適だと付け加えるのも忘れていない。「空中戦も砲撃も偵察も、1度のフライトで同時に行える」のだという。

 ダッソー社は最近、ラファール戦闘機60機を(今回の攻撃にも参戦している)アラブ首長国連邦に売ることで話し合いを進めている。皮肉なことに、2月まではカダフィとも14機の取引について話し合いを行っていた。

 一方、アメリカご自慢のステルス戦闘機F-22ラプターがリビア攻撃で姿を見せないことが、かえって話題になっている。同機が使われない理由は「同盟国の戦闘機と通信ができず、地上の標的を攻撃する能力にも限界があるから」。650億ドル以上を費やしたF-22は、イラクやアフガニスタンでさえも、1度も任務を果たしていない。
 
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年03月29日(火)01時25分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 30/3/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米スペースX、秘密裏にIPO申請 21日にアナリス

ワールド

NATOの目的「ホルムズ海峡での攻撃ではない」=仏

ビジネス

米当局、イーライ・リリー経口肥満治療薬を承認 ノボ

ワールド

欧州、4月に石油供給混乱顕在化 IEA「史上最大規
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経済政策と石油危機が奏でる「最悪なハーモニー」
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 8
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 9
    カンヌ映画祭最高賞『シンプル・アクシデント』独占…
  • 10
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story