コラム

ムバラク支持派は政府の「刺客」?

2011年02月03日(木)15時14分

 エジプトの首都カイロにいる米人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのジョー・ストークは電話取材で、今回の抗議デモをめぐるアメリカでの報道に懸念を示した。報道では、デモの最中に発生した衝突は反政府派と政府支持派による「市民同士の対立」とされていた。つまり、国家の未来について異なるビジョンを持つ2つの勢力の衝突ということだ。

 しかしストークによれば、衝突の裏にはまったく別の要因が潜んでいたらしい。


「これらは派閥の対立ではなく、『ブラウンシャツ作戦』と呼ばれるものだ。ナイフや石、棒で武装した『政府の刺客』がデモ隊の中に送り込まれたのだ。彼らが報酬をもらっているかどうかは重要ではない。あくまで平和的な手段で民主化を訴える活動家を襲うことが、彼らの目的だ」

 


 この説にどれだけ信憑性があるか尋ねると、ストークはいくつか証拠を示した。2月2日の朝、彼は衝突が起きたタハリール広場にいたという。

 彼が現場で話した人々は、500ドル以下の報酬で政権のために戦う若者たちがいたと口にしていたという。さらに略奪行為で拘束された人々の中には、内務省管轄の保安局のIDを持つ者が複数いたとされている。

 彼らが単に反政府派と異なる考えを持つ勢力なら、別の広場でデモをすればいいだけの話だ。しかしストークによると、軍は「さらなる混乱を起こしてやろうと考えている者たちに(広場に)入ることを許可した」という。「これらはどれも状況証拠でしかない。でもすべてをつなぎ合わせれば」結論は明らかだと、彼は語る。

──エリザベス・ディッキンソン
[米国東部時間2011年02月02日(水)14時52分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 03/02/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ

ビジネス

テスラ自動車販売台数、4月も仏・デンマークで大幅減

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story