コラム

COP15に乱入もくろむ環境過激派

2009年11月30日(月)16時17分

シアトルの悪夢 99年のWTO閣僚会議では会場周辺が大騒乱に。
コペンハーゲン会議でも同様の混乱が起きるのか  Reuters


 12月7日からコペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に向け、いくつかの環境保護団体が、過去の反グローバル化運動にヒントを得て、混乱を引き起こすような抗議活動を計画している。


 「10年前にシアトルで世界貿易機関(WTO)閣僚会議が開かれたときと同じように、コペンハーゲンが行動を起すチャンスだとわれわれは感じている」と、NGO(非政府組織)「クライメート・ジャスティス・アクション」のタジオ・ミューラーは独シュピーゲル誌に語っている。

 そのチャンスを生かすため、クライメート・ジャスティス・アクションや他の団体はいくつもの抗議行動を予定している。ある団体は12月11日に、「嘘つきの製品を買うな」と題したキャンペーンを行い、(会議に参加する)企業と「直接対峙する」という。12日には複数の団体が世界各地で抗議行動を計画している。商品が生産、運搬、消費される方法に抗議するため、13日にコペンハーゲン湾の封鎖を目指す団体もある。

■反グローバル化と環境問題は違う

 最も野心的なのは、16日に行われる会議に突入するというクライメート・ジャスティス・アクションの計画だろう。同団体のウェブサイトに掲載された説明によれば、「会議を妨害して、自分たちの議題を話し合うためにその場に居座る」という。狙いは、会議に出席している公式の代表団にもその議論に参加してもらうこと。彼らはそれを「権力の奪還」と呼んでいる。

 こうした戦術は、99年のWTO閣僚会議での抗議行動を思い起こさせる。当時はデモ隊が会場周辺を取り囲み、代表団の入場を妨害することに成功した。抗議行動はエスカレートし、結局600人の逮捕者と多数の負傷者を出した。しかしそれ以降、グローバル化に反対する新たな戦術として、同様の手法が頻繁に繰り返された。実際、気候変動を反グローバル化運動から生まれた抗議デモの「新しい標的」と見る向きもある。

 ミューラーは暴力は避けたいと主張するが、デンマーク当局は最悪のケースを想定し、警察に広範囲にわたる権限を与えている。デンマーク法務省は10月、警察への公務執行妨害や公共物破損への罰則を強化する法案を提出。この新法――活動家に言わせれば「ギャング取締法」だ――では、警官への公務執行妨害で40日の禁固刑が科される(現在は罰金のみ)。さらに警察当局は、危険な抗議者になり得る人物を現行の6時間ではなく、12時間拘束できるようになる。公共物破損の罰金額も1.5倍に引き上げられる。

 活動家たちがシアトルの例にならうのは賢明とはいえない。まず、環境保護団体は自らの存在を世に知らしめる必要はないということ。彼らの基本的な主張は、反グローバル化の言い分と違って広く知られているからだ。

 それに、シアトルでの活動に意味があったのは、各国首脳が新しい合意に達する――例えば、自由貿易に関する協定に署名する――のを「妨害する」という目的があったからだ。しかし地球温暖化の問題についていえば、環境保護派たちは合意に反対するのではなく、合意に達することを望んでいる。確かにデモが起きる根拠はあるが、コペンハーゲンが催涙ガスに覆われた「戦場」と化すことは、政治的な進展になんら建設的とはいえない。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年11月25日(火)11時32分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 25/11/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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