コラム

天安門事件20年目の執拗な検閲作戦

2009年06月03日(水)01時11分

抗議デモ

情報統制 天安門事件が禁句なのは中国本土だけ?
写真は香港で5月31日に行われた抗議デモ       
Bobby Yip-Reuters
 

 木曜に天安門事件20周年を控え、中国の検閲当局は「万里の防火壁(ファイアーウォール)」による取り締まりを一段と強化している。ミニブログ・サービスのTwitter(トゥイッター)や写真共有サイトのフリッカーなど西側の人気サイトへのアクセスはすべて遮断。マイクロソフトの新しい検索エンジン、ビングにいたっては、立ち上げの翌日にアクセス不能に陥った。


 当局としては、20周年を迎える前に反政府活動の温床をすべて潰したい。著名な活動家は自宅に監禁され、新聞は民主化デモへの言及を一切禁じられている。

 インターネットの「一斉摘発」は現地時間6月2日の午後5時に始まり、中国人ユーザーは突然、多くのウェブサイトにアクセスできなくなった。

 海外の新聞やテレビ局も検閲の対象だ。北京では、BBCワールドニュースが20周年に関するニュースを流し始めるたびに画面が真っ黒になった。天安門広場を撮影しようとした外国4社のテレビクルーも警察に制止されたと伝えられる。

 英エコノミスト誌の定期購読者のもとには、天安門事件に関する記事を破り取った最新号が届いている。英フィナンシャル・タイムズ紙や香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストもページが欠けていた。


 検閲の拡大を予測していたという点で、「ネットに驚くほど正確で賞」は中国のブロガー、安替(アン・ティ)のものだろう。彼は5月27日に、中国メディアに関するサイト「ダンウェイ」にこう語っている


「トゥイッターは中国では新しい。検閲当局もその正体を把握するのに時間がかかる。だがそれも、いずれは(中国当局の妨害で閲覧できなくなった)ユーチューブと同じ運命をたどる。その前に、せいぜい楽しんでおくことだ」


 トゥイッターのユーザーは、ニュースへの反応速度も一級だ。天安門事件に絡んだ検閲の話題は、彼らの人気トピックの一つになっている。だが、「中国ではもうトゥイッターができなくなったって?」と、あるユーザーは言う。「彼らはどうやって毎日を生き延びるんだ?」

──ジェームズ・ダウニー


Reprinted with permission from FP Passport, 3/6/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ムーディーズ、イタリアを23年ぶりに格上げ 「Ba

ワールド

中国のインドネシア産原油輸入が急増、イラン産の産地

ビジネス

米当局、武田薬品の血液疾患治療薬を調査 小児患者死

ビジネス

中国首相が独首相と会談、戦略的産業で緊密な協力関係
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story