コラム

ソウルで年に1度空襲サイレンが鳴る理由は? 韓国版防災の日「ウルジ」

2017年09月01日(金)21時29分

各省庁では、サイバーテロに備えた練習も行われた。練習用に作られたハッキングメールを送信して職員が引っかかるかどうかを見たり、省庁のホームページがハッカーに攻撃されていることを想定した練習などを行った。

IT政策を担当する科学技術情報通信部(部は日本でいう省にあたる)は、他より力を入れてサイバーテロ防止のため練習をするだろうな、と思っていたところ、なぜか職員向け戦闘配給食(ration)の試食会を開催していた。試食の目的は、安保のために献身している軍人に感謝し、戦争を間接的に体験して国防意識を高めるためだとか。楽しそうな企画で全職員が乙支練習に関心を持つようにすることも大事だ。

uruchi02.jpg

テロを想定した訓練も行われる。 (c) 안전한TV / YouTube

重要インフラである電力会社も軍と警察と合同で乙支練習を行った。電力設備が爆破され、同時にサイバーテロまで発生した最悪な状況を想定し、そこから電力設備の緊急復旧を行う練習である。全国から職員2365人が参加し、同じ練習を繰り返した。こういう時にVRを使えばより臨場感があり、必死で復旧作業が進めると思うのだが、まだそこまでは至ってなかった。

ウルジ練習も民防衛の日も戦時に備えた練習ではあるが、一般の人は「民防衛って今日だっけ? 面倒だな」ぐらいの感覚だ。8月23日は朝から市内あちこちに警察官が立ち、民防衛の日の準備をしていた。

午後2時サイレンがなると警察官の誘導でビルの中か地下鉄駅構内に入るか車の中にいるか、とにかく外にいてはならない。警察官に逆らうわけにはいかないので、私もしぶしぶ誘導に従いビルに入った。たった5分じっとしているだけなのに、とても長く感じてしまう。ビルでは入居企業が防災訓練をしているようで、警備員の誘導でロビーを走り回っていた。みんな「なんでこんなことしているんだろう」みたいな顔だった。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story