コラム

2度目の宇宙、日本人3人目のISS船長へ...大西卓哉宇宙飛行士に聞いた、前回フライトとの意識の違い

2025年03月12日(水)21時35分

──フライトディレクタを目指したきっかけについて伺います。前回のISS滞在前のインタビューで、大西さんは「ロボットアームの操作は得意だけど、CAPCOM(地上から宇宙飛行士と交信して宇宙飛行の支援をする作業)には少々苦労している」とおっしゃっていました。そのあたりも前回のミッション後、地上業務も極めたいと意識するきっかけとなったのですか。

大西 前回、軌道上にいるときにフライトディレクタの人たちと本当に密に連携を取って仕事をしていたのですが、その中で「彼らがどういう仕事してるのかをもっとちゃんと知らなければいけないな」と思ったのが一番のきっかけです。


CAPCOMというのはあくまで通信交信役なので地上チームの一つのポジションなのですが、フライトディレクタはその地上チームの全体を取りまとめて指揮しているポジションなので、やっぱり全体が見えるんです。

フライトディレクタを目指す中で、全体の流れの中で彼らがどういうところを気にして日々の運用を行っているのかという視点を得られたことは、とても大きかったと思っています。

──大西さんは、古川さん(古川聡宇宙飛行士)が搭乗されている時(2023年8月~24年3月)も、地上から支えることがありました。地上から宇宙飛行士の業務を見て、どんなことを感じましたか。

大西 宇宙飛行士にはそれぞれ個性があります。古川さんだけではなく、色々な飛行士の良いところを見てきているので、自分に取り入れられるところは取り入れていきたいなと思っています。

一つ例を挙げると、前回は初めてのフライトだったというのもあって、「確実性」を重視しました。だから、色々なタスクを並行してやるというのは、意識的にやらないようにしていたんです。そうすると、結構待ち時間が生じました。作業中に地上がコマンドを送っている間の時間などもあるのですが、並行して色々なことをやるとミスする可能性があるなと思って、僕は一つずつやることを選びました。

でも、その後、地上でフライトディレクタとして様々な宇宙飛行士を見ることで、抜群に速い人、作業が速くてもミスしない人というのは、複数のタスクを並行してやっていることに気づきました。

ちょっとでも空き時間があった時に、他のタスクを受けてその間に進めているの見ていると、自分は今回、2回目のフライトになるので、マルチタスクにチャレンジしたいなと思いました。おそらく、それだけの経験値は積んでいると思いますから、今回は作業効率をもっと意識したフライトにしたいと思っています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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