コラム

2度目の宇宙、日本人3人目のISS船長へ...大西卓哉宇宙飛行士に聞いた、前回フライトとの意識の違い

2025年03月12日(水)21時35分

──大西さんは、以前は飛行機のパイロットでいらっしゃいましたよね。パイロットって、マルチタスクの塊みたいな仕事だと思います。

大西 そうですね。おっしゃるとおりです。

──元々、そういう才能や経験を持っているし、宇宙飛行士の訓練でも磨いてきているから、複数を同時進行することに関しては自信があるのではないですか。

大西 たしかに、スキルとしては持っていると思うので、今回はもう少しチャレンジングにいきたいと思います。前回は、やっぱり守りに入っていたところが結構ありましたので。


──大西さんといえば、宇宙飛行士を目指したきっかけが映画『アポロ13』であることがよく知られています。映画で描かれた史実のアポロ13号ミッションでは、宇宙飛行士の生還は地上との連携が鍵となりました。

今回、大西さんのミッションロゴは、地上の仲間とともに見上げる視点で筑波山を背景に浮かぶISSを描いています。大西さんがミッションにおいて、「宇宙飛行士のチームワークだけではなく、地上とも一体となって行うのだ」と考えているというメッセージを強く感じます。それは『アポロ13』の影響もあるのでしょうか。

大西 実際に、僕が『アポロ13』で感動したところは、宇宙船のクルー3人だけではなく地上の管制チームの人たちと一丸となって危機に立ち向かって、最終的には3人が無事に帰ってこれたという「全体のチームワーク」なんです。

僕たちの仕事って、どうしても宇宙飛行士が注目を浴びてしまいがちなのですが、我々のやっていることは本当に大きなチームの仕事で、僕ら宇宙飛行士は現場での作業をやっているだけなんです。だから皆さんには、もっと大きく、プロジェクト全体の様々な仕事を見ていただけたらとすごく思います。

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ミッションロゴ(手前)とポスター 筆者撮影

──大西さんが宇宙飛行士とともにフライトディレクタもやっていらっしゃることで、地上管制の大切さも知られるようになり、注目を浴びてきていると思います。

大西 そうだと嬉しいですね。

◇ ◇ ◇

大西さん、NASA所属のニコル・エアーズさん、アン・マクレインさん、ロスコスモス所属のキリル・ペスコフさんの計4名の宇宙飛行士が搭乗するクルードラゴンの打ち上げは、JAXAイベントライブ専用配信チャンネルで「【Crew-10】大西宇宙飛行士打ち上げ生中継」で13日8時より配信されます。ISSとのドッキングは同日19時に予定されており、20時から同チャンネルで入室の様子が生中継されます。

いずれもアーカイブが残る予定です。みなさんもぜひ一緒に大西さんの宇宙への飛行を見守りませんか。

※編集部注:13日の打ち上げは延期となりました

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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