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満開の桜が見られなくなる? 60年寿命説、地球温暖化──花見に迫る危機とは
いっぽう、樹齢60年近くなった'染井吉野'から、病気に強い後継品種の桜への植え替えをする自治体もあります。
東京都国立市のさくら通り(全長1.8キロ)には、1960年代に約180本の'染井吉野'が植えられましたが、2010年頃からてんぐ巣病などによって幹が空洞になったり、強風で倒木したりするものが目立ち始めました。市は2013年から、てんぐ巣病になりにくい桜の品種「ジンダイアケボノ」に植え替えを進めました。
桜の名所づくりを進める公益財団法人「日本花の会」は、これまでに200万本以上の'染井吉野'の苗木を提供してきましたが、最近は病気に強いジンダイアケボノとコマツオトメへの植え替えを推奨しています。
2100年には、九州から東北までいっせいに開花する?
桜の名所の危機の原因は、樹木の寿命だけではありません。九州では、すでに地球温暖化による暖冬の影響で、開花が遅れたり満開まで時間がかかったりする年があります。
桜の花芽(蕾)は前年の夏に作られ、冬の前に成長を止めて休眠状態になります。その後、冬に一定期間の低温(概ね3℃から10℃前後)にさらされると休眠から目覚め(休眠打破)、そこからは気温の上昇とともに成長します。休眠打破のために必要な低温期間が足りないと、開花はかえって遅れます。そのため、2020年以降、九州では3年連続で北部から南部に桜前線が進む逆転現象が起きています。
さらに近年は、「満開までに時間がかかる」現象もみられるようになりました。満開の定義は標準木の80%の花が一斉に咲いている状態なので、休眠打破がうまく進まないと花芽の生長の個体差が顕著になって、なかなか80%に達しない状況に陥ると考えられています。
九州大学名誉教授の伊藤久徳氏は、2009年の地球温暖化シナリオを使って2100年までの桜の開花についてシミュレートしました。その結果、日本周辺の平均気温を平均で2~3℃程度高く設定すると、東北地方で桜の開花が今より2〜3週間早まり、九州などでは1〜2週間遅くなる──すなわち、3月末に九州から東北まで、'染井吉野'がいっせいに開花するという計算になりました。
さらに、種子島や鹿児島の一部では'染井吉野'は開花せず、九州南部や四国南西部、長崎、静岡などでは一本の木で開花がダラダラと続いて満開にならないという結果が出ました。
2100年に日本人は花見をできるのでしょうか。地球温暖化を軽減し、あるいは桜の休眠打破をもコントロールできるようになって、平安時代から変わらぬ春の宴を開いていることを期待しましょう。
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