コラム

慣れない雪道、どう歩く? 3ステップで防ぐ転倒事故

2022年01月18日(火)11時30分
雪

雪道では、滑っても頭を打たないようにすることが何よりも重要(写真はイメージです) Aduldej-iStock

<雪道で特に滑りやすい場所は? 正しい転び方は? 科学ジャーナリストの茜灯里が、運動生理学的な知見に基づいた雪道の歩き方を解説する>

今年は、新年早々の1月6日に、東京都心部で10センチ積もる4年ぶりの大雪がありました。

都心に雪が降ると話題になるのが、雪慣れしていない都民の転倒事故です。東京消防庁などの調べによると、6日の降り始めから7日午後9時までに530人が転んで頭や腰を打つ怪我などをして病院に搬送されました。

気象庁は11日に、「今冬は冬の終わりまでラニーニャ現象が続く可能性が高い(80%)」と発表しました。

「ラニーニャ現象」が起きると、冬の間は気温が平年より低くなり、日本海側を中心に雪の量が増える傾向があります。さらに、気象庁の一カ月予報では、1月後半からは南岸低気圧の影響で、関東など東日本の太平洋側でも雪の降る可能性を示唆しています。

次の大雪が来る前に、雪道で転ばない方法をおさらいしておきましょう。

【雪道への心構え1・事前準備編】

1.東京と北海道では「冬靴」の定義が違う

北海道では、自動車が冬に向けてスタッドレスタイヤに履き替えるように、人も「冬靴」に履き替えます。

北海道の冬靴は、防水性と防滑性を重視していて、スパイクや溝付きのゴム底など雪道でも滑りにくくなっています。いっぽう、首都圏で冬靴というと、内側が起毛になっていて暖かいものやブーツなどのファッション性が高いものが大半で、雪道にも耐えられる滑り止めが付いていることは稀です。そこで、雪国以外の人は、ネット通販などで雪道用の防滑性のある靴を手に入れる必要があります。

年に数回あるかどうかの積雪のために冬靴を買うのを躊躇う場合は、ネット通販で数百円で買える、靴に後付けできる「滑り止め防止スパイク」や「滑り止めゴムマット」などがあると安心です。

2.東京と北海道では「雪道の特徴」が違う

北海道の雪道は、溶けた雪が氷になって固まったアイスバーン、雪が踏み固められた圧雪、溶けかかってぐちゃぐちゃになった雪、などさまざまな状態になります。いっぽう、首都圏では本格的なアイスバーンになることは少なく、濡れた路面に少し雪が積もった状態が多いです。北海道ではアイスバーンよりも雪の上を歩いた方が転びにくいことが多いですが、首都圏では濡れて滑りやすくなった雪に乗らないことが重要になります。

また、選ぶ靴も変わってきます。たとえば、スパイク付きの冬靴は、北海道のアイスバーンや圧雪には強いですが、首都圏の濡れた路面は氷が薄すぎてスパイクが刺さりません。さらに、スパイクが付いていると建物や電車の中のタイルの床で滑りやすくなるので、靴底全体に溝のあるゴム底製の靴のほうが適している場合が多いです。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・イスラエル首脳、7日会談へ ガザ・イラン情勢協

ビジネス

FRB議長、利下げ前に一段のデータ「待つ」姿勢を再

ワールド

中国、WTO改革で米と対話の用意 「途上国」特権見

ビジネス

米5月求人件数、37.4万件増 関税の先行き不透明
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    未来の戦争に「アイアンマン」が参戦?両手から気流…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story