コラム

チャットGPTだけが言語AIじゃない。米大学が有力34モデルの性能を比較ランキング

2023年02月24日(金)08時00分

話題のChatGPTは、多くの可能性の1つに過ぎない Busyfingie-shutterstock

チャット型 AIモデルのChatGPTが、世間の話題を集めている。Googleもまた、ChatGPTに対抗するために BARDというチャット型AIを発表してきた。しかし実は世界には負けず劣らず優秀な言語AIモデルが多数存在する。どの言語モデルが最も優秀なのだろうか。

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

実はChatGPTにしろBARDにしろ、特定のサービスに特化したAIモデルで、その性能は基盤となる超大型モデルの性能に左右される。ChatGPTはGPT-3.5と呼ばれる基盤モデルをチャット用に微調整したものだし、BARDは LaMDAと呼ばれる基盤モデルを軽量化したものだ。比較すべきは基盤モデルということになる。

今後多くの一般企業が最新の言語AIを自社サービスに導入しようとする中で、それぞれの基盤モデルの性能を把握することが重要になってくるはず。そうしたニーズを見込んで、米スタンフォード大学の基盤モデル研究所では、世界の有力言語モデルの中で公開されている基盤モデル34個を、質疑応答、情報検索、要約などの42の用途での性能を57の評価基準で比較し、用途ごとにランク付けし発表している。

基盤モデルとは学習済みの巨大モデルで、微調整することで比較的早く簡単に特化型モデルを量産できるAIモデルのこと。同研究所では47の言語モデルを基盤モデルと認定しているが、性能を確認するため完全にアクセスできるのは14個、限定的なアクセスが認められているのが27個、まったくアクセスできないのが6個だという。AI研究の雄、Google系列のDeepMindは言語の基盤モデルを2つ開発しているが、残念ながらどちらも非公開。なので、その実力を計測できないのだという。

言語AIの基盤モデルが47個も存在するわけだが、その多くはテック大手や資金力のあるAIベンチャーによって開発されたものだ。例えばOpen AIは1社で14個の基盤モデルを開発しているし、Googleは DeepMindを含めると6個。Googleは、このほどAIベンチャーのAnthropicへの3億ドルの出資を発表、これをGoogle傘下に数えると Google所有の基盤モデルは7個ということになる。Facebookの親会社のMeta Platformsは3個、Microsoftは2個だ。ただMicrosoftはOpenAIに数十億ドルの追加出資を決定。MicrosoftがOpenAIの株式の49%を持つ筆頭株主になると言われているので、OpenAIの14個を含めるとMicrosoft所有の基盤モデルは16個になる。

AIベンチャーでは、Cohereが6個、AI21 Labsが4個、Aleph Alphaが3個を開発。テック大手はこうしたAIベンチャーに出資もしくは買収の話を持ちかけていると言われている。つまり世界の言語AIの基盤モデルは、テック大手に独占されようとしているわけだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story