コラム

Microsoftがゲーム大手を7.8兆円で買収。メタバースにその価値はあるか

2022年01月25日(火)15時38分

ゲームのプラットフォームも同様だろう。Amazonプライムゲームが、ゲームプラットフォームとしては頭一つ抜きんでた感じがあるが、まだまだ緒戦。Micosoftが勝ち残る可能性は十分にある。映画、ドラマの領域で起こっていることがゲームの領域でも起こるのであれば、資金力に物を言わせていち早く地位を確保したいところだろう。

これがMicrosoftの短期的目的だと思う。

一方で長期的目的は、やはりメタバースだと思う。「メタバースとリアル社会との主従逆転」はしばらくはないが、最終的にはやはり時代はその方向に向かうのだと思う。

今でも、パソコンを複数台立ち上げて仕事をする人がいる。私の場合は、iPadやiPhoneも含めて3、4台のデバイスを立ち上げて仕事をしている。1台でzoomでテレビ会議をし、1台でGoogle Docsで文章を編集、1台でウェブ検索、1台でLINEテキストをやりとりする。そんな感じだ。これを複数人と同時に行うと、一人で行うよりも生産性が格段に増す。

今私が3、4台のデバイスを使うのは、1台のデバイスの処理能力が限定的だから。1台のパソコンでマルチタスクで作業をこなすより、複数台のデバイスを使うほうがサクサク動くからだ。しかし将来は、デバイスの性能やネットの回線速度が大幅に向上するだろうから、1台のデバイスの中で、すべてが完結するようになるだろう。まるで自分が仮想現実の中で作業しているような感覚になることだろうと思っている。こうなると、リアル現実で仕事をするより、メタバースで仕事をするほうが何倍も生産性が上がるようになる。

メタバースというと、上半身だけのアニメのようなアバターのイメージが強いが、アバターである必要はない。今、アバターなのはデバイスの処理能力が低いから、それに合わせているだけに過ぎない。やがてすべてのテレビ会議、ディスプレイ表示、動画視聴、共同作業が、1つの仮想空間の中でできるようになる。仕事やコミュニケーション、遊びもメタバース上で行うようになる未来。現実と仮想が「主従逆転」する世界だ。こういう世界観を、Zukerberg氏は目指しているのだと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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