コラム

ボイスの時代がそこまできた。モバイルファーストを思い出せ

2016年11月25日(金)16時00分

 LINEのユーザーが勢いよく伸び始めた2011年ごろの話だ。IT業界のあるイベントに、LINEの産みの親である、当時のNHNの舛田淳氏が登壇した。パネルセッションで、LINEの成功の秘訣を聞かれた桝田氏は「モバイルファーストですかね」と答えた。

 それを聞いた他のパネラーの人たちがキョトンとしていたのが印象的だった。

 他のパネラーは、大手ネット企業の幹部たち。多分、他のパネラーたちは「え?うちのサービスはモバイルページもあるし、モバイル端末からも利用しやすくなっているんだけど、それとどう違うんだろう」って考えていたのだと思う。

 でも「モバイルからでもアクセスできます」と「モバイルを第一に考えてサービスを設計しています」とでは、全然使い勝手が違う。

ボイスファーストで勢力図を塗り替えろ

 まるでPCユーザーを無視するぐらいの勢いで、LINEはモバイルファーストを徹底していた。それが勝因だった。

 PCユーザーはビジネスマン中心の約2000万人。モバイルユーザーは消費者中心の数千万人、しかもさらに増えることが期待できる。PCユーザーを無視してもサービスは成立する。そう考えてLINEは、モバイルに一気に舵を切ったのかもしれない。

 LINEの成功は、モバイルファーストの重要性を業界に先駆けて明らかにした。その後、ニュースサイトをモバイルファーストの考えで作ったグノシーやスマートニュースがユーザーを増やし、ネットオークションをモバイルファーストで作ったメルカリが大成功を収め、だれもがモバイルファーストの重要性を認識するまでになった。

 モバイルファーストがネット業界の勢力図を塗り替えたわけだ。

 そして今、音声認識技術の急速な進化を受け、ボイスファーストの時代が来ようとしている。

 スマホはどれだけ普及しても一人一台にしか普及しないが、音声技術搭載のIoTデバイスは今後、身の回りにあふれることになる。

 スマホを無視してもサービスが成立するようになる。ボイスに一気に舵を切ってもいいのかもしれない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story