コラム

温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本の極楽

2024年04月11日(木)11時40分
周来友(しゅう・らいゆう)(経営者、ジャーナリスト)
銭湯

kuremo-iStock.

<その魅力は、癒やし効果や清潔さ、風呂の種類の豊富さだけにあるのではない>

最近、銭湯の魅力を「再発見」している。昨年還暦を迎え、新宿区から月に4枚の入浴券をもらえるようになったのがきっかけだ。入浴料は520円(大人)だから、年間で約2万5000円分とかなりお得である。

それで週1回、せっせと近所にある万年湯という銭湯に通うようになった。定期的に銭湯に行く生活は、風呂なしアパートに住んでいた来日当初の貧乏学生時代以来だ。

これは私だけじゃないと思うが、大きな湯船につかると疲れが取れ、心身共に癒やされる。万年湯は清潔できれいだし、ジェット風呂、電気風呂、濁り湯のシルク風呂と種類が豊富なのも楽しい。

中国にも公衆浴場(「浴池」と呼ばれ、浴場内にはあかすりをしてくれる人がいる)の文化があるので、私は来日当時から、裸で他人と一緒に風呂に入ることには抵抗がなかった。しかも、湯船につかる前に体を洗うマナーがある日本の銭湯は、中国より断然きれいだ。

湯船にあかが浮いていない! と感動した約37年前の来日時を思い出す。近年は日本のスーパー銭湯が進出しているし、中国の銭湯も昔よりきれいになっているかもしれないが。

どちらにしても、銭湯はまさに極楽。だが私にとってその魅力は、癒やし効果や清潔さ、風呂の種類の豊富さだけにあるのではない。

一番は、なんと言っても他のお客さんとの交流だ。裸の付き合いで相手の本音を聞けるのが何より楽しいのである。

湯船につかっていると、地元のおじさんから「(テレビに出てる)周さんだろ?」などと話しかけられ、世間話に花が咲く。

時には「日本の政治家はダメだな」の一言から政治談議が始まり、「おたくの習近平のほうがまだいい。中国の力を借りてアメリカから独立したいよ」なんて過激な発言をするおじさんも。「いやいや、彼は独裁。日米同盟を大事にしたほうがいいですよ」。これではどちらが中国人か分からない(笑)。温かい湯につかりながら、密告される心配もなく政治談議に興じることができる社会のなんと素晴らしいことか。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの

ワールド

トランプ氏、司法省にエプスタイン氏と民主党関係者の

ワールド

ロ、25年に滑空弾12万発製造か 射程400キロ延

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story