最新記事

日本社会

日本の男性の家事分担率は、相変わらず先進国で最低

2022年10月18日(火)14時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
家事を手伝わない夫に文句を言う妻

コロナ禍の家庭内でストレスが高まるケースも takasuu/iStock.

<コロナ禍で在宅時間が増えても、これでは家庭内でのストレスが増大するだけ>

コロナ禍以降、テレワークや自宅勤務の動きが広がっている。外は怖いが家の中は安全。政府はこう思っているのだろうが、家の中でも良からぬことは起きる。親子とも家にこもることでストレスが高じ、虐待やDVが増えているという。夫婦間のいさかいも起きているようで、家族と四六時中一緒にいたくない人のために、居場所の部屋をレンタルする業者も現れている。

普段との生活のギャップが大きいのは、働き盛りの男性だろう。いつも仕事ばかりで、家庭のこと(家事)はほとんどしない。妻からすれば、何もしない夫がずっと家にいるのは苦痛だ。SNS上では「大きな子どもが1人増えたようだ」という妻の嘆きも見られる。夫婦間の葛藤の火種は多い。

これも、普段から男性の生活が偏っているが故のことだ。生活は仕事一辺倒で、家庭内での仕事(家事)の分担もうまくいっていない。その現状をデータで可視化するのはたやすい。OECDの統計サイト(OECD.Stat)に、15〜64歳男女の生活時間の統計が出ている。各種行動の1日の平均時間だ。日本の3つの数値(2016年)を拾ってみると、以下のようになる。

▽男性の有償労働時間=452分
▽男性の無償労働時間=41分
▽女性の無償労働時間=224分

有償労働は仕事、無償労働は家事等と読み替えることができる。これらを使って、生活の歪みを可視化する2つの指標を計算してみる。

▼ワークライフバランス度=41/(452+41)=8.3%
▼妻との家事等分担率=41/(41+224)=15.4%

男性の仕事と家事の合算に占める家事の割合は8.3%、夫婦の家事時間合算に占める夫の割合は15.4%、ということだ。いかにも低いという印象を持つのは、筆者だけではないだろう。他国と比較すると、その印象は確信に変わる。<表1>は、主要7カ国について同じ指標を計算した結果だ。

data221018-chart01.png

算出された数値(右欄)を見ると、欧米の諸国は日本よりだいぶ高い。2つの指標とも30%を超えている。男性のWLB度が最も高いのはフランスで36.5%、家事分担率のマックスはスウェーデンで43.7%となっている。

フランスでは男性のタスクの3分の1が家事等で、スウェーデンでは男性の家事分担率が半分に迫る勢いだ。個の生活を重視する国、男女の平等が進んでいる国の性格が出ている。

対して日本は、どちらの指標も7カ国の中で最も低い。数値の絶対水準で男性の生活が歪んでいるのが分かるが、他国と比べた相対水準でもその酷さが際立つ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中仏首脳、イラン核問題の「政治的解決」訴え=中国国

ワールド

豪23/24年度予算、総債務減少の見込み=財務省

ワールド

豪中銀、政策金利据え置き 物価上昇圧力を警戒

ワールド

アルツハイマー病、リスク遺伝子2つでほぼ確実に発症
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中