最新記事

給与所得

日本はフルタイムで働いても「普通の生活」が出来ない国

2021年10月27日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
リモート勤務

コロナ禍の影響でフリーランスの働き方を選ぶ人が増えている(写真はイメージで記事の内容とは関係ありません) kohei_hara/iStock.

<フリーランスで働く人たちの年収の最頻値は、男性で200万円台、女性は100万円未満>

コロナ禍の影響で、フリーランスの働き方を選ぶ人が増えているという。正社員としての勤め先の仕事が減っているためだろう。あるいは自宅でPCを使った副業をしてみて、「これは本業でいける」という展望を持った人もいるかもしれない。

しかし現実はそう甘くない。フリーランスのフリーは自由、ランスは兵隊という意味で、元々の含意は「自由兵」だが、フリーとは「不利ー」で、何の保障もない「不利兵」と揶揄する言い方もある。

給与も悲惨を極めている。総務省の『就業構造基本調査』(2017年)に、有業者の年間所得分布が従業地位別に出ている。<表1>は、正規雇用者、非正規雇用者、そしてフリーランスの分布を整理したものだ(フリーランスとは、従業地位が「雇人のいない業主」)。年間250〜299日就業、週間43〜48時間就業の者に限定している。月に22日、1日8~9時間ほど、普通に働いている労働者のデータと見ていい。

data211027-chart01.png

赤字は最頻階級で、男性正規は300万円台、非正規とフリーは200万円台で、女性では正規が200万円台、非正規が100万円台、フリーは100万円未満となっている。

これは、家計補助や小遣い稼ぎの短時間労働を含んでいない。月22日、1日8~9時間ほど働くフルタイム就業者のデータだ。それでこの有様とは、少ないという印象を拭えない。最近よく言われる「安いニッポン」が数字に表れている。

フリーランスをみると、男性の31.6%、女性の72.4%が200万円に達しない「フルタイム・ワーキングプア」となっている。フリーランスは労働時間の際限がなくなりがちで、かつ給与の未払いも横行している。こうした搾取に遭いやすいのは、とりわけ女性のフリーランスだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中