最新記事

民族主義

カタルーニャ独立に揺れるスペイン 運動静まったバスクが手本となるか

2017年10月11日(水)17時33分

10月9日、スペイン北東部のカタルーニャ自治州の分離・独立問題で同国政府と州政府が憲法上の衝突に直面するなか、どちらの側の政治家も、北部バスク地方に危機回避の解を見いだそうとしている。写真はカタルーニャ独立派の旗(左、中央)とバスクの旗(右)を掲げて独立を訴える市民。ビルバオで9月撮影(2017年 ロイター/Vincent West)

スペイン北東部のカタルーニャ自治州の分離・独立問題で同国政府と州政府が憲法上の衝突に直面するなか、どちらの側の政治家も、北部バスク地方に危機回避の解を見いだそうとしている。

フランス国境に接し、緑の山々が連なるバスク地方では、かつて暴力的だった独立運動は鎮静化している。寛容な自主徴税権が、独立への盛り上がりを抑える役目を果たしている。

「われわれには、あのような経済的不満はない」と、バスク民族主義党のアイトール・エステバン氏は、ネルビオン川の両岸に広がるバスクの中心都市ビルバオの党本部でロイターに語った。

「人々は、カネを巡る不満から行動する必要を感じていない。これは大きい」

カタルーニャ自治州政府は、バスク式の自治方式を模索しているのではなく、10月1日の住民投票で独立支持が圧倒的多数の票を獲得したことを受け、独立を要求している。スペイン政府は、住民投票を認めていない。

だが、自治州連立政権の中道議員のほとんどは、バスクに認められている自主的徴税権がカタルーニャにも認められるなら、独立要求は取り下げてもよいと内々に語っている。

首都マドリードでは、中央政府の負担が巨大になったとしても、1981年のクーデター未遂事件以来最大の政治危機となっている今回の独立騒動を和らげる妥協案のお手本としてバスクモデルが役立つ、と話す社会党議員もいる。

中央政府が、カタルーニャ自治州の住民投票を暴力的に取り締まったことを受け、バスク地方では控え目な抗議行動が起きた。だがそれでも、ビルバオの分離派の機運が高まることはなかった。

ビルバオでは、建物のバルコニーに連帯を示すためカタルーニャの旗がバスクの旗と並んで飾られているが、街の様子は平和で繁栄している。かつて、独立反対派の政治家はボディーガードを必要とし、自動車爆弾の恐怖に常にさらされていた。今では旧市街地の酒場や世界的に有名なグッゲンハイム美術館が観光客でにぎわっている。

デウスト大の世論調査によると、独立を望むバスクの住民はわずか17%で、その是非を巡る住民投票実施を希望する住民は半数以下だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM非製造業総合指数、4月は49.4 1年4カ

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想下回る 賃金伸び鈍化

ワールド

欧州委、中国EV3社に情報提供不十分と警告 反補助

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中