カタルーニャ独立に揺れるスペイン 運動静まったバスクが手本となるか
数十年にわたる分離独立闘争で850人以上の犠牲者を出してきたバスク地方の反政府組織「バスク祖国と自由(ETA)」は、今年武装解除に応じ、武装闘争に事実上終止符を打った。
バスク地方は今では、1人当たりの経済生産で同国最高水準の州の1つとなり、失業率も国内で最低水準となっている。
「バスク地方では、長年の武装闘争や経済危機後の不安定さへの倦怠(けんたい)感が大きく、独立議論は棚上げになっている」と、デウスト大のハビエル・バランディアラン教授は指摘する。
スペインの経済負担
バスクの財政自治の起源は19世紀にさかのぼり、1978年にスペイン憲法に明文化されたもので、欧州の地方に認められたなかでは最も寛大なものの1つだ。
スペイン有数の経済地域で、国内生産の5分の1を稼ぐカタルーニャに同様の権利が認められれば、スペイン国家にとって約160億ユーロ(約2.1兆円)の損失になると、スペイン科学研究高等会議(CSIC)が2014年に指摘している。
これは来年の予算の約13%にあたる額で、スペインの債務や借り入れコストにも影響する。
このためラホイ首相は、カタルーニャに対してバスク同様の寛大な扱いは除外している。
バスク自治州とスペイン政府の取り決めでは、バスクは地域のほぼ全ての徴税を独自に行っており、その額は今年130億ユーロ(約1.7兆円)に上る見通しだ。
バスク側は、防衛やインフラ整備関連費用などの国家支出負担分として、8億ユーロを政府に返還することになっている。
ラホイ首相は、少数与党として政権に返り咲いた昨年、バスク民族主義党に2017年予算を支持してもらった見返りとして、バスクとの取り決めでさらなる譲歩を行った。
これは、カタルーニャと同様の取り決めを交わすことに反対することが確実な、他の地方では不人気だった。自分たちには歳入減を意味するからだ。
スペインでは一般的に、地方政府は徴収した税金を中央政府に納め、中央政府は経済的に貧しい州を優遇する方程式に従って再分配する。