最新記事

エネルギー

OPEC盟主サウジと非OPECロシアが歴史的急接近 市場安定で協調

2017年6月5日(月)17時40分

6月1日、OPECの盟主サウジアラビアと非OPECの産油大国ロシアの間で、突如デタント(雪解け)が進んでいる。写真はモスクワで5月30日撮影(2017年 ロイター)

石油輸出国機構(OPEC)の盟主サウジアラビアと非OPECの産油大国ロシアの間で、突如デタント(雪解け)が進んでいる。原油安で従来の対立路線の修正を迫られた形だが、両国間の緊張緩和で原油業界は様相が一変するかもしれない。

OPECと非加盟国は先週、協調減産の延長を決めたが、その直後にロシア国営石油会社ロスネフチのイーゴリ・セチン最高経営責任者(CEO)とサウジの国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセルCEOがサウジの都市ダーランで会談した。

両者は過去にイベントなどで何回か顔を合わせているが、正式な会合を持ったのは初めて。関係筋2人によると、会合は話題がインドネシアやインドなどアジア市場での協力関係の可能性などに及ぶなど、内容的にもかつてない広がりを見せた。

関係筋は協議の詳細を明かさなかったが、サウジとロシアがアジアでの協力関係について話し合ったのは初めてだという。会合ではナセル氏自らがセチン氏を連れてアラムコ本社内を案内する一幕もあった。

セチン氏とナセル氏が会談したという事実は、サウジとロシアの急接近を考える上で示唆に富む。原油消費国は原油の輸出大国である両国の対立関係につけ込み、より有利な契約条件を手に入れてきただけに、今回の動きに注目するだろう。

サウジとロシアの関係改善は、かつてはほとんど想像すらできなかった。米国のシェールオイル生産の急増により原油価格は2014年半ば以降急落したが、それにもかかわらずサウジとロシアの間では1年前まで事実上、対話すら皆無だった。セチン氏はOPECとの協調減産にも強硬に反対していた。

しかし、わずか数カ月で状況は急変。ロシアとサウジは協調減産の延長で足並みをそろえ、両国にとって重要なアジア市場で協力する可能性を話し合うまでになった。

両国関係に詳しい中東湾岸諸国の高官は両国関係について「新たな『愛の枢軸』だ」と評した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中