最新記事

ワークプレイス

旧来の銀行を激変させる「リアルタイムワーキング」

2016年6月10日(金)16時42分
WORKSIGHT

WORKSIGHT

「開かれた金融機関」を追求する豪州最大手の銀行[NAB(ナショナル・オーストラリア銀行)] (写真:1階は一般利用できるカフェ、コワーキングスペース「ヴィレッジ」など。2階はオフィス総合受付。金融機関としては異例のオープンな空間。)


[課題]  業務の効率性アップとオペレーションモデル改革
[施策]  リアルタイムワーキングの導入と健康的な環境作り
[成果]  従来の銀行的ワークスタイルを激変させた

 金融機関、という言葉から思い浮かべる閉鎖的空間とは裏腹の、「開けた」オフィスである。1階は、一般利用できるカフェとカンファレンスルーム、そして会員企業に貸し出されているコワーキングスペース。上階を仰ぎ見れば、各階の社員が働く姿が露わだ。顧客と社員を隔てる壁は極力取り除かれている。

「当社にとって何より大切なのはお客様」とオフィス構築に携わったロジャー・マクモラン氏は幾度となく口にした。

【参考記事】シェアリングエコノミーで人をつなぐ、オランダ発のコワーキング

「顧客が安心して利用できる環境づくりがキーポイントです。目指したのは、『消費者のことをわかっていない』という銀行が持つイメージを打ち破る、開けた空間。当社の内部に入り当社を感じ、理解できる設計としました。これはまた、社員たちがお客様と接近できる設計でもあります。『何のために我々はいるのか。全てはお客様にサービスするためである』。このメッセージを日々、社員は受け取っているのです」

2009年にリアルタイムワーキング制を本格的に導入

 とはいえ、顧客志向は従来からナショナル・オーストラリア銀行が掲げていたもので、新オフィスによる産物とは言い難いかもしれない。より大きな課題は、効率性追求とオペレーションモデルの変化にこそある。

 空間を有効活用し、63000平方メートルのなかにひしめく約6000人の従業員に自由と開放感をもたらすこと。そして「個人に自由を与えるステージを超え、チームが自由に働けるワークスタイル」(マクモラン氏)を与えることだ。

 2009年、同社はリアルタイムワーキング(以下RTW)を本格的に導入。より速い意思決定、カジュアルなミーティング、効率的なコラボレーションを実現させるために集中作業用のブースや、ミーティングスペース等、多様なワークプレイスを各フロアに配した。

wsNAB-1.jpg

(左上)NAB社屋の外観。サザンクロス駅から徒歩1分のところにある。敷地形状を模した三角形のモチーフが先端的なイメージを伝える。(左下)1階のカンファレンスルーム。各種イベントに使用される。社外への貸し出しも。(右)ビル中央の吹き抜け部。半島のようにせり出しているオフィス中央のスペース(写真右手)には、セクションを超えたメンバーが集う。

wsNAB-2.jpg

写真中央奥がチームのための「ハブ」スペース。チームミーティング用のソファや、プロジェクトの進捗を共有するための掲示板等が置かれている。

wsNAB-3.jpg

吹き抜け部に面したミーティングスペース。個人利用している社員もいるが、メンバー同士ちょっとした寄り合いの場としても重宝する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替、従来より物価に影響しやすいリスクを意識=植田

ビジネス

テスラ、独工場操業を1日停止 地元は工場拡張に反対

ワールド

イランとの核問題協議、IAEA事務局長が早期合意に

ワールド

インド総選挙、3回目の投票実施 モディ首相の出身地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中