最新記事

貿易自由化

TPP合意に立ちはだかる最大最強の「障壁」

大統領選出馬のヒラリーが豹変? 国務長官時代に推進した協定に不支持をにおわすが

2015年5月18日(月)14時57分
デービッド・シロタ、マシュー・カニンガムクック

ヒラリーはTPP反対派の期待に応えて合意阻止に立ち上がるのか Joe Raedle-Getty Images

 米議会の与野党幹部は先週、TPP(環太平洋経済連携協定)を大きく進める貿易促進権限(TPA)法案を共同で提出した。法案が可決されれば、オバマ大統領は通商交渉で強い権限を手にする。議会は、大統領が他国と結んだ貿易協定に賛成か反対かの判断を示すことしかできず、個別の修正を求めることができなくなるのだ。

 難航してきたTPPが、ようやく合意に向けて弾みがついた──かに見えた。ところが、来年の大統領選出馬を表明したクリントン前国務長官はTPPに対するこれまでの積極的な立場を修正し始めている。陣営の広報担当によれば、クリントンはTPPへの賛否を決めかねているという。

 以前、クリントンはTPP推進を明確に示していた。12年11月、オバマ政権の国務長官を務めていた当時、こう述べている。

「2国間の協定やTPPのような多国間の協定を推し進めていく必要がある......TPPは、自由で透明で公正な貿易への道を開き、法の支配と公正な競争環境を実現する貿易協定としてお手本になるだろう。交渉がまとまれば、参加国で世界の貿易の40%を占めることになり、労働者と環境の保護が強化される」

 ところが先週、クリントン陣営の広報担当を務めるニック・メリルはニューヨーク・タイムズ紙に対し、クリントンがTPPを支持しない可能性があるとにおわせた。進歩派の議員や活動家の間では、TPPが国内の雇用を破壊し、大企業に不当に大きな力を与えると懸念する声が少なくない。

貿易協定で「変心」の前歴

「いかなる新規の貿易協定も2つの条件を満たすものでなくてはならないと、クリントンは考えている」と、メリルは述べる。

「第1は、アメリカの労働者を守り、賃金を引き上げ、国内に良質の雇用を増やすこと。第2は、アメリカの安全保障を強化すること。これらの条件を満たせなければ、交渉の席を立つべきである。アメリカの人々の豊かさと安全を高めることが目的であって、貿易のための貿易であってはならない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中