コラム

女優が撮ったストリートフォトグラフィーに目を見張る

2019年08月05日(月)11時15分

From efi longinou @efi_o

<ベルリンを生活の場とする女優エフィ・ロンジヌ。写真は独学で、スマートフォンから始めた。被写体が極めて自然体である瞬間を切り取っている>

インスタグラムがきっかけとなって写真にどっぷりはまったり、それが大きな転換点となって、以後ますます自らの写真、写真哲学に磨きをかけていったりする人は多い。今回取り上げるInstagramフォトグラファーもその1人だ。

スウェーデンで生まれ、ギリシアで育ち、ここ5年ほどはドイツのベルリンを生活の場としているエフィ・ロンジヌだ。ストリートフォトグラフィーに目を見張るものがある。本職は女優だ。

写真は独学で、スマートフォンから始めたという。アテネに住んでいた頃、しばしば朝方の街中を歩き、店の家具や古い書物に目を留め、それらを写し始めた。こうした行為は単純なことに思えるが、彼女自身「幸運だった」と筆者の問いに答えてくれたように、写真家にとってはとてつもなくプラスになり得る。

東地中海周辺の歴史的建造物と強烈な太陽光が織りなすコントラストの効いた光景は、それだけで光の魔術になる。それを意図的に、それも光のよい朝方の時間帯に目に焼き付けていたのである。

始めたのは世間よりやや遅かったが、ロンジヌは2012年頃からインスタグラムにはまり込み、さまざまな写真的試みを行うようになった。他の優れた写真家たちの作品を観察し、勉強しながら。私が彼女の作品を知ったのもちょうどその少し後、2013年頃だ。

とはいえ、その頃はそれほど感銘を受けなかった。確かに、画角にある要素要素への美的な執着心と感覚は優れていた。だが、街角で決定的な写真を狙い過ぎていたためか、かえってセットアップ的な感じになっていた。

それは、ポートレート撮影でも同じだった。被写体との距離感が曖昧なためか、あるいは最終的なイメージを(無意識にしろ)意識し過ぎていたためか、結局は多くが予定調和のありきたりな作品になっていたのである。だが、ここ最近目にするようになったロンジヌの写真は明らかに以前と変わっていた。

彼女のストリートフォトグラフィーは、その王道である、Candidと呼ばれるタイプのものだ。被写体が極めて自然体である瞬間を切り取っているのである。俗に「Stolen Moment」とも言われる、被写体の喜怒哀楽やムードが最高潮に達した時を見計らって撮影しているだ。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米軍、カリブ海でベネズエラ船を攻撃 違法薬物積載=

ワールド

トランプ氏、健康不安説を否定 体調悪化のうわさは「

ワールド

ウクライナ、ロシアによるザポリージャ原発占領の合法

ワールド

トランプ氏、関税巡り最高裁に迅速審理要請へ 控訴裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    トランプ関税2審も違法判断、 「自爆災害」とクルー…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story