コラム

未婚女性やバーニングマン......決して一線は越えない「普通の人」たち

2020年03月13日(金)12時10分

From Dina Litovsky @dina_litovsky

<女性版バチェラー・パーティーで羽目を外す女性や、ネバダ州の砂漠地帯で行われる祭典に集う人々を撮るディナ・リトフスキー。インターアクション(交流)を写真に収め、女性のアイデンティティを探求しようとしている>

今回紹介するInstagramフォトグラファーは、ウクライナで生まれ、ローティーンの時にニューヨークに移り住んだディナ・リトフスキーだ。41歳の女性写真家である。

写真家として歩み出したのは、かなり遅い。ニューヨーク大学での専攻は心理学だった。だが、当初夢を抱いていた精神科医は自分に合わないと、卒業後、写真に興味を持ち始める。その後、数年を経てからニューヨークの芸術大学、スクール・オブ・ビジュアルアーツ(修士課程)に入学し、写真を本格的に修めた。

ドキュメンタリー写真家である。作品のモチーフは、ほぼ常に一貫している。それがパブリックなものであろうがプライベートなものであろうが、人々のさまざまなインターアクション(交流)の中で行われる社会的なパフォーマンスだ。とりわけ、サブカルチャー・シーンに興味があるという。

そうしたものを通して、しばしば強烈なフラッシュを多用し、被写体とそのシーンを自身のスタイルでさらに誇張しながら、社会心理学的に探求しているのである。

それは、リトフスキーが大学時代に学ぼうとしていたものと基本的に同じかもしれないが、写真を撮ることは、彼女自身が興味を抱いていた世界へより早く通じることになり、より物事の核に迫ることができるのだという。

リトフスキーの長期プロジェクト「Bachelorette(バチェロレット:未婚女性)」は、彼女の写真家としてのアイデンティティを代表するシリーズの1つだろう。結婚を間近に控える女性たちの宴を通して、現代の女性たちの行動、心理を切り取ったものである。

ただ、現代社会が、とりわけ男性社会が今もイメージする典型的な女性像ではない。男性のバチェラー・パーティーのそれに近い。結婚で今後オープンな自由恋愛ができなくなるという現実を踏まえ、酒にどっぷり酔い、SMパフォーマンスやセックストイなどを取り入れたりして、思いっきり羽目を外しいるのだ。

一見、特別な人の特殊なパーティーに思えるが、ここ10年ほど、アメリカの至るところでお目にかかれるようになってきた光景である。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認

ビジネス

中国、太陽光発電業界の低価格競争を抑制へ 旧式生産

ワールド

原油先物は横ばい、米雇用統計受け 関税巡り不透明感

ワールド

戦闘機パイロットの死、兵器供与の必要性示す=ウクラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story