コラム

「男が持つ邪悪性をドキュメントしてきた」現代を代表する戦争写真家クリストファー・モーリス

2020年01月16日(木)14時10分

From Christopher Morris @christopher_vii

<弾丸が飛び交う中で決定的瞬間を切り取ってきた。戦争写真家になったきっかけは、子供の頃に見ていた米軍機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」と軍のイベントで出会ったフォトジャーナリストという一般市民。その長いキャリアを通して何を伝えたかったかを聞いた>

今回紹介するInstagramフォトグラファーは、過去30年以上、世界各地の戦場、紛争地域を取材してきたベテラン写真家のクリストファー・モーリスだ。タイム誌の契約フォトグラファーであり、現代を代表する戦争写真家の1人といっていい。

1958年、カリフォルニア生まれ。現在はフロリダで妻と子供たちと暮らしている。インスタグラムでは、自らの歴史的なアーカイブ写真に加え、近年のニュース・ドキュメンタリー、それに彼にとってはまったく新しいジャンルと思われる作品も発表している。

モーリスの最大の持ち味は、被写体の臨場感を至近距離でありのままに切り取るスタイルだ。ストリートフォトグラフィーの達人たちが、決定的瞬間を逃さず、被写体に気付かれずに間近でシャッターを押すのと根本的には同じである。ただし、環境がまったく違う。弾丸が飛び交い、砲弾の煙が充満する中で、あるいは一歩間違えば簡単に命を落としてしまうような状況下で、彼はそれを行なってきたのである。

彼の戦争写真は、大半は望遠レンズを使って撮影したものではない。かなりの広角レンズで撮影したものだ。90年代には、20ミリから35ミリの広角ズームレンズが多用され始め、それを使って紛争地域でもより迫力を出そうとする写真家が増えた時期だったが、モーリスのパナマやボスニア、チェチェンなどの作品は、まさにその先端を行っていた。彼の撮影スタイルがその時代に多くの影響を与えた、とも言われている。

モーリス自身が戦争写真家になったきっかけは、運命的なものだっただろう。父親は米空軍と契約を結んでいた企業で働いていた。父親を通して子供の頃から軍のパイロットたちに接し、また、米軍機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」に掲載された写真を日ごろから見ていた。それは戦争の匂い、兵士たち、そして死だった。そうした写真になぜか魅せられてしまったのだという。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友トラスト、次期社長に大山氏 海外での資産運

ビジネス

台湾の11月輸出受注、39.5%増 21年4月以来

ビジネス

スペインGDP、第3四半期改定は前期比+0.6% 

ワールド

タイ、金取引の規制検討 「巨額」取引がバーツ高要因
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story