<ジェフ・ジェイコブソンの写真哲学は「いつシャッターを切るか」と「その瞬間の立ち位置をどこにするか」の2つだけ。立ち位置のセンスが彼をトップクラスの写真家にしたが、魅力はそれだけではない>

今回取り上げるのは、ニューヨークを拠点に活動するアメリカ人、ジェフ・ジェイコブソン、73歳。非常にシンプルな写真哲学と自分自身に対する忠誠心を持つ天才肌の写真家である。

70年代にはアメリカ南部で弁護士として働いていたが、自分の感情に忠実になりたい、それを表現したいと考え写真家になった。一時期は写真家集団マグナムにも属していた。

ジェイコブソンの作品の最大の魅力は構図にある。しばしば強烈な光を取り入れながら、目の前の空間にあるさまざまなグラフィック的要素を生かし、独自のカメラアイで構図を作り出す。その源は冒頭で述べた痛快な写真哲学からきているが、それは「いつシャッターを切るか」と「その瞬間の立ち位置をどこにするか」の2つだけだ。

とりわけ重要なのは後者。文字通り、被写体を前にしたとき、最も魅力的な空間を切り取るための立ち位置だ。実際、この立ち位置のセンスが、ヴィジュアル的なバックグラウンドなどほとんどなかったにもかかわらず(まともに写真を学んだのはチャールズ・ハーバットのワークショップ1つだけだという)、彼を世界的な写真家の1人にした。

とはいえ、シャッターを切るときの立ち位置は時に、目の前の被写体や空間を、グラフィック的に魅力があるように切り取る以上の意味を持つ。ジェイコブソン自身、年月を経てそう考えるようになったという。

政治的信念、経済的価値観(クライアント、あるいは読者に気に入られる方向性をどうするか)、さらには写真家自身の人生との関連性――それらをどう反映させながら写真を撮るかまで、その意味に含まれてくる。

癌を宣告された2005年、コダクロームが生産を中止した2011年