コラム

日用品に取り付けて、日常を優しくIoT化するフランス発のセンサー機器

2015年11月09日(月)17時00分

動きと温度を取得する「クッキー」と情報を束ねてスマートフォンなどのアプリに転送する受信装置の「マザー」組み合わせて、自由な組み替えや拡張ができる Mother & Cookies

 身の回りの製品がネットワーク化され、互いに情報をやり取りすることで様々な情報を記録したり機器の制御を自動化できるようになる「IoT(モノのインターネット)」の流れは、いわゆるスマート家電などを通じて、すでに私たちの生活の中に入り始めている。

 しかし、その恩恵に与るために、利用中の日用品をIoT対応製品と入れ替えたり、ライフスタイルの変化に応じてIoT機器そのものを買い換え続けることに疑問を抱いた企業があった。それが、フランスのセンス社だ。

 同社CEOのラフィ・アラジアン氏は、かつてビオレ社という会社でIoTのパイオニア的製品のナバズタグ(アルメニア語でウサギの意)を開発・販売していたが、それは1つのプロダクトに様々なセンサーを内蔵した、いわば万能を目指す多機能な専用製品だった。

 だが、人々にとって大切なのは、技術の素晴らしさを誇示するような製品ではなく日々の暮らしにあることに気付いた氏は、方向性を180度転換。既存の様々な日用品に取り付けられるシンプルで汎用的なセンサー(動きと温度を取得する「クッキー」)と、そこからの情報を束ねてスマートフォンなどのアプリに転送する受信装置(マトリョーシカのようなフォルムの「マザー」)を組み合わせて、自由な組み替えや拡張ができるようにしたのである。


 薄く軽いクッキーは、歯ブラシやウォーターボトル、キーホルダーには同梱のシリコーン製アタッチメントを使って取り付けられるほか、壁やドア、薬瓶、冷蔵庫、コーヒーメーカーなどには繰り返し使えるパテ状の粘着剤利用して貼り付けて使うことができる。そして、アプリ次第で、歩数、水分やコーヒーの摂取回数、在宅人数確認、歯磨き時間の管理、ドアの開閉回数、薬の飲み忘れ防止、室温確認、睡眠時間など色々な用途に対応させることが可能となっており、それぞれ工夫されたグラフィック表示で履歴や現在の状況が一目でわかる仕組みだ。

2.Coockies01.jpg

3.Cookies02.jpg

 さらに、家や家族の状況を概観できるアプリ画面は、漫画やモダンアートを思わせる色使いとデザインで、フランスらしいユニークな見せ方が実現されている。

4.Senseboardアプリ.jpg

 本来、自由な組み合わせで使えるMother & Cookiesには、シニア世代がよく利用する機能をあらかじめ設定したSilver Motherと呼ばれるセットもあり、遠隔地の家族がプライバシーに配慮しながら日々の見守りを行ったり、アルツハイマーの兆候がある人が薬を飲んだり日常の習慣を忘れないためにも役に立つ。

 この製品は、確かにIoT機器の1つの方向性を示しているといえるだろう。

プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中・大型トラックに25%関税、11月1日から=トラ

ワールド

ロ・イスラエル首脳が電話会談、中東情勢など巡り協議

ビジネス

ユーロ圏「ディスインフレの過程終了」、物価巡るリス

ワールド

CBSニュース編集長にオンラインメディア創業者、米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 2
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿すると「腎臓の検査を」のコメントが、一体なぜ?
  • 3
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレクションを受け取った男性、大困惑も「驚きの価値」が?
  • 4
    一番お金のかかる「趣味」とは? この習慣を持ったら…
  • 5
    筋肉が育つだけでは動けない...「爆発力」を支える「…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃の「オーラの違い」が話題…
  • 7
    「不気味すぎる」「昨日までなかった...」ホテルの天…
  • 8
    「美しい」けど「気まずい」...ウィリアム皇太子夫妻…
  • 9
    監視カメラが捉えた隣人の「あり得ない行動」...子供…
  • 10
    イエスとはいったい何者だったのか?...人類史を二分…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 7
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 8
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story