コラム

日本の政党政治はこれからどうなるべきか(後編)──緑の党を作ろう

2017年10月27日(金)21時35分

しかし、環境破壊は激しく進んでいる。日本自体は、1960年代の公害問題を克服し、環境は戻る、良くなる、ということを実証した素晴らしい国だ。しかし、日本だけが良くなっても、世界の環境破壊は止まらない。地球温暖化は否定の仕様のない悪影響を地球に与え、異常気象は、世界で普遍的に起こり、日常的になり、異常気象が通常となっている。従来と違って、意識的に環境最優先と強く主張しないと、個々人の日常生活を超えて、日本として世界に主張していかないと、環境問題は解決できないと少しずつ日本の人々も実感し始めているのではないか。

したがって、なぜ日本では「緑の党」が成立しなかったのか(過去にそういう党は存在したが、存続し得なかったのか)という問いに対しては、だから、これから作る、という回答があり得る。私は、この仮説を信じてみたい。

私は環境の専門家でもなんでもない。一有権者として、そのような党があったら投票してみたい、と思っただけである。そして、それは私だけではないのではないか、と感じている。だから、是非、誰かにこのような政党を作ってみて欲しいのである。

具体的には、小選挙区には立候補しない。比例区だけ候補者を立てる。そして、候補者は、職業としての政治家ではない。環境問題に貢献したいというメンバーが組織をつくり、そのメンバーが交代で候補者になる。当選しても一期限りである。仕事は別に持ち続ける。当選した場合だけ、一定期間出向のような感覚で、その間だけ仕事を離れ、議員活動に専念する。1期終われば、いままでの仕事に戻るのである。こうすることによって、いいメンバーが集まる可能性があるのではないか。権力闘争や政治的なプロセスには興味はないが、環境政策に関心のある専門家が参加できるのではないか。

期待ゼロよりは建設的挑戦を

中核には、政治の専門家としての政治家が必要だろう。1名あるいは数名の経験のある議員にいてもらう必要がある。そして政党運営のために、ベテランスタッフも最低数名は必要であろう。あとのメンバーはパートタイム、あるいはボランティアである。

選挙活動は従来のような形ではしない。環境問題の理解を深めるシンポジウムを開催したり、小規模な集会をボタンティアでしたり、そのような論考や主張を発表したりするだけである。政策については徹底的に勉強をする。

カネは必要である。上述のスタッフの人件費は安定的に必要であり、また立候補にもカネが必要である。ただ、普通の政党に比べて格段に少なくて済む。毎回、風を求めて右往左往する必要はない。当選できなくても構わないのである。

これでどこまで政策に影響力を持つことができるかは未知数である。大きな力にはならないかもしれない。しかし、ゼロよりはましではないか。環境を良くすることにマイナスにはならないだろう。政治に何も期待できないのであれば、ゼロよりましなものに賭けてみるのはありではないだろうか。

*前編はこちら「日本の政党政治はこれからどうなるべきか(前編)

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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