最新記事
シリーズ日本再発見

ラグビーW杯で考えさせられる、日本の「おもてなし力」

2019年10月16日(水)11時00分
高野智宏

10月6日、ナミビアとの試合を前に「ハカ」を披露するニュージーランド代表の「オールブラックス」(東京スタジアム) Matthew Childs-REUTERS

<各国から訪れるラグビーファンたちを、どのようにもてなすか。組織委員会や各試合会場での工夫と努力は、来年の東京五輪に向けても参考になるかもしれない>

9月20日に開幕した、アジア初開催の「ラグビー ワールドカップ 2019 日本大会」。北海道から九州に及ぶ12地域の試合会場で世界最高峰の戦いが繰り広げられ、日本が世界ランク2位のアイルランドを破る「静岡の衝撃(Shock of Shizuoka)」を実現するなど、大変な盛り上がりとなっている。

そんななか、試合内容以上に各国の選手やメディアから称賛されているのが、出場国チームに対する「おもてなし」だ。

事前キャンプ地の千葉県柏市入りしたニュージーランド代表「オールブラックス」に対し、地元の子供たちが、同チームが試合前に披露する伝統的な踊り「ハカ」で歓迎。北九州入りしたウェールズ代表には、地元の少女たちから同国の聖歌「カロン・ラン」の合唱が贈られた。いずれも各国で報道され、大きな話題となっている。

そんなおもてなしの数々と試合会場での盛り上がりに、オールブラックスを筆頭に各国チームが試合後、観客席に向かって日本式のお辞儀で感謝を示し、また、フランス、ナミビア、イタリアの選手は、試合後にロッカールームを清掃しているという(日本人のおもてなしに対する返礼と受け止められている)。

もちろん、おもてなしの相手は各国の代表チームだけではない。大会期間中は40万人とも50万人とも、それ以上とも見込まれる数の外国人が日本を訪れる。彼らをどうもてなすかについて、関係者は心を砕き準備を進めてきた。実際、来年には東京オリンピック・パラリンピック開催も控えており、日本の「おもてなし力」が今、試されていると言っていいかもしれない。

何しろラグビーW杯は、東京を中心としたエリアに限定される東京五輪と違って、前述のように日本の各地で試合が開催される。また、1カ月半と開催期間が長く、参加国はヨーロッパやオセアニアが中心ということもあって、裕福なラグビーファンが多く来日して長期滞在するため、経済効果が大きいとも試算されていた。

そこで大会組織委員会をはじめ、試合会場となる競技場を有する各自治体も実行委員会を結成し、訪日外国人客への多彩なおもてなし企画を実施している。

外国語スキルを必須条件にせず、多くのボランティアを集めた

その筆頭が、世界中のラグビーファンとの最前線に立つボランティアの存在だろう。組織委員会は昨春、全国12の開催都市で活動する約1万人のボランティアを募集。しかし意外なことに、応募要件に書かれたのは「日本語で読み書き・日常会話が可能な方」で、外国語のスキルは必須条件ではなかった。どういうことか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 6

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中