コラム

フェイスブックとどう付き合うべきか

2012年02月17日(金)17時14分

「これって、やばいんとちゃう?」

 割合無邪気に、そして便利に近所の人々や大学時代の先輩後輩、前の会社の同僚との交流に利用していたフェイスブックにヒヤリとしたのは、最近はやりの判定アプリの許可画面を見たときだった。ここから発売中のNewsweek日本版2月22日号の特集「危ないね!facebook」の取材・編集は始まった。

「●●ビジネス判定」「××占い」「△△診断」......。今、フェイスブックにはこんなアプリがあふれている。この手のアプリを利用しようとすると、必ず現れるのが「許可画面」。「基本データへのアクセス」「あなたのプロフィール情報へのアクセス」「他の人と私が共有した情報へのアクセス」といった個人情報をアプリ会社への提供を認めることが、アプリを楽しむための条件になっている。

 路上のアンケートで電話番号や生年月日を書き込むことをためらう人たちが、フェイスブックでは驚くほど大胆になる。個人を特定するうえで重要な情報である生年月日を堂々と公開している人もかなり多い。生年月日を友達限定でなく公開にしているぐらいだから、ほかの学歴や職歴は言うまでもない。そんなに自分をさらけ出して一体何がしたいのかと思うほど、個人情報を全世界に向けて公開する人が多いことに驚かされた。

 判定アプリ業者2社にそれぞれ電話とメールで取材(1社は直接会うかせめて電話で、と申し出たがメール取材しか受け入れられなかった)したが、どちらも保存する情報は名前とID、性別程度でそれ以上の詳細な個人データにはそもそもアクセスしていない、という説明だった。1社はビジネスパートナーを探すための人寄せの仕掛けとして、1社は今後のアプリ展開のテストケースとして判定アプリを位置づけていた。

 だからといってわれわれユーザーが安心してフェイスブックにあらゆる情報を委ね、どんなアプリも気にせず使っていい、というわけではない。詳細は特集をお読みいただきたいが、無警戒にフェイスブックを使うリスクは確実に存在する。そもそもなぜ8億人のユーザーを集めるこの人気サイトが使用料を徴収しないのか。その答えは特集の記事で本誌テクノロジー記者ダニエル・ライオンズが示しているが、フェイスブックがもたらすプライバシーの危機はわれわれ日本人の想像よりずっと深刻だ。

 フェイスブックのしたたかさに比べれば、しょっちゅう動かなくなるツイッターがかわいく見えるほどだ。

――編集部・長岡義博(@nagaoka1969)

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾、次期総統就任後の中国軍事演習を警戒 治安当局

ワールド

中国、大気汚染改善目標が半数の都市で未達 経済優先

ワールド

AUKUS、韓国とも連携協議 米英豪の安保枠組み

ワールド

トランプ氏、不法移民送還に向けた収容所建設を否定せ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story