コラム

ガソリン高騰をさらに煽るウクライナ危機──プーチンの二重の賭け

2022年02月07日(月)14時30分

その一方で、バイデンは1月31日、カタールのシェイク・タミーム首長をホワイトハウスに招いて会談し、カタールを「良き友人で頼れるパートナー」と持ち上げた。

中東のカタールは天然ガス生産量で世界第6位(2020)を誇る。オミクロン株が蔓延するこのタイミングで、リモート会議ではなく、わざわざホワイトハウスでタミーム首長と対面したこと自体、「エネルギー供給源を分散させることでロシアとの対決が不可能でなくなる」というメッセージをモスクワに送るものといえる。

1970年代の石油危機でアラブ諸国による禁輸に直面したアメリカは、メキシコなど石油輸出国機構(OPEC)加盟国以外からの原油輸入を増やした。つまり、石油を武器にしたアラブ諸国は、結果的に新興産油国の成長を促し、自分で自分のライバルを育ててしまったともいえる。

これに照らすと、ロシアが原油高を背景にアメリカに迫ることは、それ以外の輸出国を活性化させる契機にもなりかねない。アメリカがエネルギー供給源をこれまで以上に多角化することは、ロシアへの強気の姿勢をとりやすくする一因となる。

その意味でもプーチンにとってウクライナ危機は賭けなのであり、ウクライナをめぐる米ロのチキンレースは、原油によって加熱し、さらに原油価格を高騰させるという悪循環に陥っているといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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