映画『橋のない川』で描かれるこの国の部落差別は過去形になっていない
クラスメイトの女の子に手を握られた孝二は好かれていると勘違いするが、部落民は夜に蛇のように体温が下がると聞いたのでそれを確かめたのだと打ち明けられる。修学旅行に行けば、旅館で孝二と同じ部屋で眠る級友は誰もいない。
観ながらつらい。でも現実だ。差別の理由は生まれた区域が違うから。苦し紛れにそう答えた僕に、海外の学者やジャーナリストたちはバカじゃないかとあきれていた。僕もそう思う。水平社宣言から今年で100年だが、この国では今もこの差別を過去形にできていない。
『橋のない川』(1969年)
監督/今井 正
出演/北林谷栄、長山藍子、高宮克弥、大川 淳
<本誌2022年6月14日号掲載>
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