コラム

「不平等な特権待遇」国会議員の文通費に知られざる歴史あり(3)~GHQ「特権」を否定したのに特権化

2022年03月14日(月)06時00分

国会改革は「待ったなし」の状況だ Toru Hanai-REUTERS

<国会議員の「特権」文通費を歴史から考えるコラムの3回目。GHQの指示による「特権」を否定したのに、結果的に特権化したその理由は>

国会法が規定する通信費(現在の文書通信交通滞在費)の制定過程において、GHQによる勧告・指示が「公的な書類の郵便を無料化する特権の付与」を構想していた経緯について、前回のコラム「『不平等な特権待遇』国会議員の文通費に知られざる歴史あり(2)」で説明した。今回はその続編である。

日本側が最終的にまとめた「国会法案」(昭和22年(1947年)2月3日帝国議会に再提出、3月19日成立)は通信費について、次のように条文を規定していた。

第三十八條 議員は、会期中公の書類を郵送し及び公の性質を有する通信をなすため、別に定めるところにより手当を受ける。

この条文案は、もともとのGHQ勧告・指示案から大きく変更されている。変更点は四点ある。

第1に「会期中」という時間的条件が付されたこと。第2に「議会によって発行せられたる公の書類」ではなく「公の書類」になったこと。第3に「その他公の性質を有する郵便物」が「公の性質を有する通信」になったこと。そして第4に、「公の書類の郵送」と「公の性質を有する通信」それぞれの費用が無料になる「特権」が付与されるのではなく、「手当」が支給されるようになったことである。

「郵便」に限定するのではなく、「通信」も追加された点も大きな変更だが、何よりも、郵便費用の無料化という「特権の付与」ではなく「手当」を支給するようになったことが重要な変更点だ。

なぜGHQが指示した「特権の付与」が否定され、「手当の支給」に変更されたのか。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

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