コラム

チュニジア「ツイッター大臣」の正体

2011年01月19日(水)15時29分

 暴動によって23年以上に及んだ独裁政権が倒れた先週のチュニジアの一件が本当に「ツイッター革命」と呼べるかどうかは議論の余地がある。だが少なくとも1人のツイッター革命児がこの国の新政権に加わったことは確かだ。

 先週のデモの最中に逮捕され、その後釈放された民主化活動のブロガーでツイッタラティのスリム・アマモウが、新政権で青少年・スポーツ担当大臣として閣僚入りすることになった。アマモウは「海賊党」の党員であることを自称している。同党はスウェーデンで発足し、今では世界各国で政治活動を進める団体。インターネット上の透明性を推進し、知的財産権に反対することで知られている。

 ニュースブログのトーレント・フリークはこう伝えている。


 アマモウが若者・スポーツ担当大臣に任命されたのは、彼がインターネット上で築き上げてきた高い評判のおかげだといえるだろう。チュニジアで起こった今回の政権崩壊劇では、インターネットが重要な役割を果たした。

 ソフトウェア会社「アリクシス」で開発チームを率いるアマモウは、ツイッターで自らを「反・検閲、反・知的財産権の旗手」であり、「インターネットにおける中立性の賛同者」だと語っている。海賊党の主張に沿った発言だ。

 トーレント・フリークはアマモウとの接触に成功。彼は閣僚指名に興奮を隠せない様子だった。

 インターネット上の権利もそれ以外の権利も含め、自らの権利を守るために立ち上がったチュニジア人たちに祝福を送りたい。彼らの力が明るい未来につながることを祈ろう。


 

 スウェーデンとスイスの海賊党は、内部告発サイト「ウィキリークス」にとっての貴重な支援者でもある。彼らにサーバーやホスティングサービスを提供してくれているからだ。

■ネチズンの声を重大視した新政権

 アマモウが閣僚の立場から海賊党の主張を提言できるのかどうかは定かでない。そもそも、既に3人の閣僚が辞退したこの新政権がいつまでもつのかもわからない。だが彼が閣僚に任命されたことは、チュニジア政権がネット上での抗議運動を極めて真剣にとらえていることの表れのようだ。

 アマモウは今後、ネット上での影響力を失っていくかもしれない。彼が不人気な新政権に加わったことで、さっそく多くのチュニジア人がネット上で彼を攻撃し始めている。

 彼がどれほど長続きするにせよ、世界に散らばる海賊党の政治家の中で、今のところアマモウがナンバーワンであることは間違いない。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年1月18日(火)11時32分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 19/1/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

9月の米雇用、民間データで停滞示唆 FRBは利下げ

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロ・円で上昇、政府閉鎖の

ワールド

ハマスに米ガザ和平案の受け入れ促す、カタール・トル

ワールド

米のウクライナへのトマホーク供与の公算小=関係筋
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story