コラム

AIでビジネスのカンブリア大爆発を起こすLeapMindの野望

2016年11月09日(水)12時25分

 倉庫内に入庫された商品のラベルなどを読み取って自動的に仕分けしたり、在庫リストを管理してくれるようにもなるだろう。

 熟練の漁師にしか見分けられないような魚群探知機の魚影もAIなら見分けられるので、高級魚に的を絞った漁業が可能になるかもしれない。

「人間の目をはるかに超える精度の『目』をモノやデバイスに取り付けることができれば、どのような製品やサービスが可能になるのだろうか」という観点で周りを見渡せば、ビジネスチャンスはあちらこちらにころがっているはずだ。

 先日、取材でシリコンバレーに行った際に、スタンフォード大学AI研究所の元所長で、現在は中国バイドゥ(百度)のチーフサイエンティストを務めるAndrew Ng氏の講演を聞く機会に恵まれた。講演の中で同氏は、「ディープラーニングが今後5年以内に何も影響を与えない産業など存在するんだろうか。学生たちと、1つ1つの業界を例に取って議論してみた。結果は、そんな業界は1つもない、ということだった」と語っている。

 AIチップの小型化、低価格化が進むことで、製品、サービスのカンブリア大爆発が今、まさに起ころうとしているわけだ。

強みは外国人リサーチャーと働きやすい環境

 彗星のように現れたLeapMind。いったいどんな会社なのだろうか。

 取締役COOの渡辺一矢氏によると、従業員はアルバイトも含め20名ほど。まだまだ小規模だ。従業員の半数近くは外国人だという。

 渡辺氏に、CEO松田総一氏の人物像を尋ねてみた。渡辺氏は「松田くんは、飲むと『ドラえもんになりたい』『ロボットになりたい』とずっといってるおもしろいヤツです」と笑う。やはり発想がユニークな人物なのだろう。

 技術面とビジョン作りは松田氏が一手に引き受け、それ以外の営業、人事、総務、広報など、すべてを渡辺氏が担当しているのだという

 渡辺氏に同社の強みを聞いても、「強みですか。うーん、なんでしょうね」という返事。そこで同社に業務委託で参加しているAIリサーチャー兼エンジニアの遠藤太一郎氏に、代わりに話を聞いてみた。

「松田さんの技術力もさることながら、渡辺さんが作り出す組織の雰囲気がいいんです。外国人にとっても働きやすい環境なんです」と解説してくれた。

 研究者数だけ見れば、LeapMindのようなベンチャー企業よりも、大手企業の方がAI研究者を数多く抱えているはず。にもかかわらず、大企業からのひっきりなしの引き合いが続いている。どうしてなのだろう。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NYラガーディア空港が閉鎖、エア・カナダ傘下機と地

ワールド

ロシア、ホルムズ海峡封鎖に反対=インタファクス

ワールド

連合の春闘賃上げ率5.26%、3年連続で5%超の高

ビジネス

バークシャー子会社が東京海上に出資、再保険分野やM
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 3
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記者に、イスラエル機がミサイル発射(レバノン)
  • 4
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 5
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    「筋力の正体」は筋肉ではない...ストロングマンが語…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    人気セレブの「問題ビデオ」拡散を受け、出演する米…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story