コラム

「患者らしく」より「自分らしく」 株式会社TOKIMEKU JAPAN塩崎良子さん

2016年08月30日(火)16時00分

 今もまだ再発の可能性が、残っている。「治療中は癌細胞という倒す敵がいるので、そこに集中していればよかった。でも今は、無治療になり、もしかしたら突然、敵が飛び出してくるか分からない状態。気持ちを奮いたたせるのに少しだけパワーがいるんです」。

 時々、不安に押し潰されそうになる。でも、仕事を始めたことで、病気のことを考える暇もなくなった。

「事業を将来的にこんなふうにしたいという思いはありますが、それよりも今できる事を精一杯やる。一日一日、今この一瞬、自分の人生にトキメいていたい。そういう風に気持ちを切り替えるようになりました」。

患者ではなく自分として

 癌患者は、自分のアイデンティティが癌患者になり、時として、社会やマスコミが作り出した「癌患者」という「枠」に、いつの間にか自分を押し込めてしまう。そして次第に「自分らしさ」を失ってしまうケースが多い。「私も癌ザバイバーの一人として、このビジネスを通じて、患者として生きるのではなく、『自分らしく』生きていきたい。逆境をかかえる多くの人たちと共に人生のもつ喜びとトキメキを共有したい」。塩崎さんは、そう願っているのだと言う。

 見た感じは、20代前半。話を聞かなければ、苦労を一切知らないようなお嬢様に見える。ビジネスの最前線にいる起業家で、しかも癌サバイバーに向かって、そう感じるのは失礼かなと思ったのだが、「若く見えますね」と素直に感想を述べた。

「そう言われるのが一番うれしいんです。ビジネスセンスがありますね、とか、優秀ですね、って言われるより、若いですね、って言われたい。そう言ってくれた人のことは一生忘れませんから!」とお茶目な笑みを浮かべた。

 癌サバイバーではなく、自分らしく生きている女性の美しさが、そこに見えたような気がした。

2歩先の未来を創る少人数制勉強会TheWave湯川塾主宰
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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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