コラム

沖縄の次は北海道? 日本の無防備な国境に迫る中国

2018年05月01日(火)16時15分

クイズショー化した政治

トランプ米政権は中国を国際秩序の変更を目指す勢力だと見なしているのに、日本は中国の経済構想「一帯一路」に興味津々だ。同盟国との同床異夢は米政治家の神経を逆なでしてもおかしくないが、日本の政治家は意に介している様子もない。

李の訪日が決まった後で批判しても仕方ないが、せっかくの機会なので中国の「北海道ドクトリン」について議論し合うよう提案したい。今やその影すらないが、かつて中国は長らく北方四島の日本返還を支持してきた。中国はなぜ、いつからその政策を放棄したのか、と確認すればいい。

中国は国際社会で何でもロシアと共闘するようになったが、責任ある大国を目指しているならば、北方四島政策の変更についても説明義務がある。中国が国際秩序を根底から変えようとしているならば、まずは第二次大戦で日本が強奪された北方四島の返還に手を付ければいい。

日本の議員たちはそんな「つまらない昔話」や領土問題に興味がないようだ。日本には沖縄及び北方対策担当相がいるが、四島の名前を正確に言えるかどうかを確かめる、クイズのような政治ショーに力を入れている。

遠い中東に頭が回らないのなら、せめて李の北海道訪問に合わせ、国際的な視点から国会で領土問題を議論してほしい。

<本誌2018年5月1&8日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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