コラム

向かうところ敵なしの習近平に付ける薬もなし

2018年04月03日(火)14時45分

一方、習の「一帯一路」経済構想はそうではない。実態は陸路でも海上でも他国の資源を一方的に吸い上げ、運び出すのは中国に有利な情報。さらには余剰資金と労働力、粗悪な鉄鋼材を第三世界の市場に流し込むだけの自国中心の政策だ。

それとは対極にあるグローバリゼーションを、習は決して許さない。他国の思想は全て「中国の特色ある社会主義」に抵触するとされ、「ネット上の万里の長城」である検索遮断ソフトを越えることはない。

反革命にして反グローバリゼーション。「建設的関与を続ければ民主化する」「裕福な中間層が育てば協調的な国になる」といった言説は所詮、空想だったと欧米の識者たちも反省しなければならない。

少なくとも習の存命中、世界は中国を諦めるしかない。むしろポスト習時代に備え、長期戦略を練る必要があろう。

<本誌2018年4月3日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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