World Voice

powerd_by_nw

イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

日本もいよいよ始まるコロナワクチン。争奪戦で自国生産を目指すイタリアのスキル

iStock- sezer ozger

| ワクチンの製造が間に合わない。ワクチンの争奪戦

ファイザーは「原材料が不足しているためにワクチンの到着が遅くなっている」と、一方的に「提供する用量数を減らすと決定をした」と、とても短い文にて、供給削減を一方的に通知されたイタリア。

この"供給量を減らします"という急な変更のニュースは、「全国民へ一刻も早くワクチンを!」と計画的にキャンペーンを開始したばかりのイタリアにとっては、完全に出鼻をくじかれた形である。
ピーク時は1日に9万2千人のイタリア人が抗コロナワクチン接種を行っていたが、ワクチンの配達の遅れにより、1日あたり平均8万人がワクチン接種を受けていたペースが、今や平均2万8千人という遅延が発生している現状である。

日本は、1月20日、米製薬大手ファイザーと新型コロナウイルスのワクチンの供給契約を結んだと発表した。
2021年中に1億4400万回(7200万人)分の供給を受けることで正式に契約をしている。

日本政府は、いよいよ2月中旬にワクチン接種を開始する方針を明らかにした。まずは医療従事者から。

イタリアがこんな感じなのに、日本は本当に大丈夫だろうか・・・。

ファイザーだけでは心細い。
日本政府はファイザーのほか、米モデルナからワクチン5000万回分(2500万人分)、アストラゼネカから1億2000万回分(6000万人分)の供給を受ける契約を結んだ。


しかし、イタリアには、さらにこのアストラゼネカからも、遅延とワクチンの共有量の削減が無碍に通知されたのだ。


アストラゼネカは、イギリス・ケンブリッジに本社を置く製薬企業である。
ベルギーの工場での生産困難に続いて、第1四半期の供給量が予想より60%少なくなることを欧州連合に通知した。
欧州を離脱する英国にだけワクチンを優先的に配給し、EU加盟国の国々は既に支払い済みで合意に至っているのに、契約した容量分が届かない遅延に続き、容量も大幅に減らされたと一斉に抗議を始めた。
イタリアはもちろんのこと、ドイツ、スペイン、オーストリア、チェコ、ギリシャ、デンマークもアストラゼネカに抗議した。
イタリア政府は契約違反であるので、アストラゼネカに対し、法的措置を考えていると発表した。

ドイツ・メルケル首相は"ゼネカなんて待ってられないわ"と、早々と他のワクチンメーカーを召喚した。
スペインは、エルムンド保健大臣がEUの供給の遅れを非難し遺憾の意を発表した。

それに反し、英国のマスコミは、アストラゼネカVS欧州連合のワクチン取り合い戦争の足場固め開始し、"EUがロンドンからワクチンを盗もうとしている"と非難した。


そして、EU連合が代表し契約違反だとアストラゼネカへ抗議。

アストラゼネカのCEOは、「EUに対する義務はないと説明し、ワクチン製造のための"最大限の努力"を義務付ける契約の条項はなかった」と主張し始めた。本来契約内容は表に出してはいけない機密保持の合意があったにも関わらず、アストラゼネカはそれを公表した。その後、欧州委員会と英国企業との間の対立のレベルが再び高まった。

アストラゼネカが機密保持のルールを無視し、なぜ契約内容を一般に公開したのか。
それは、契約内容を公表することで、アストラゼネカは「本契約の条件と矛盾する、または実質的に矛盾する、または本契約に基づく義務の完全な履行を妨げる可能性のある義務の対象とならないことを宣言、保証、および同意する」という部分を強調したかったから。

そもそも契約の中では条項もないし、義務付けられてもないし、ワクチンの製造が遅れているのは原材料の不測などが原因なので、それは不可抗力であって天災のようなもの。だから、債務不履行ではないし責められる筋合いもないんだよと主張し、保身に走ったのだ。


EU連合VSアストラゼネカという対立構造には1週間ほど続き、非常に高い緊張状態にあった。

EU連合内でワクチン量を確保するためには、EU以外へワクチンが流出してしまうことを禁止するという。ワクチンの原材料についてもどこから仕入れ、どこへ流すのかなど、EUが完全に監視下に置き管理するという法律を盛り込む準備を始めたのだ。

ワクチンを日本に輸入するためには、まずはEUから承認を得なければいけないのか?

欧州連合(EU)域内で製造された新型コロナウイルスワクチンの日本への輸出をEU側が承認したのが2月6日だ。

EU委員会の委員長であるウルズラ・フォンデアライエンは、アストラゼネカに対し

「契約は非常に明確であり、それに含まれるコミットメントは正確です。当初は大変ワクチン製造に苦労しているとのことですが、契約書に定められた内容が、なぜ実現できないのか、その理由を知りたいと思います。」

と述べた。
また、フォンデアライエン委員長は、アストラゼネカのCEOが反論している"ワクチン製造のための最大限の努力条項が存在しない"ということを述べている、その件については、

「製薬会社がワクチンを開発できるかどうかが不明な場合にのみ適用されていたものであって、現在はその次元ではなく、ワクチンはそこに存在してあり、開発はできた。なので、アストラゼネカはワクチンの投与量を約束の時間どおりに提供する必要がある。」

と述べた。


契約には、「アストラゼネカは、欧州委員会が1億回の追加投与を命じるオプションを付けているが、3億回の投与量を生産する能力を展開するために"最大限の合理的な努力"を行うことを約束した」と記載されていた。

アストラゼネカも欧州連合も、どちらの当事者も(少なくとも今のところは)訴訟を起こすつもりはない。

不可抗力による遅延については、
契約は、「不可抗力の理由により、委員会、加盟国、アストラゼネカのいずれも相手方に対して責任を負わない。また、それらが契約に違反したとはみなされない」と規定している。

協定で言及されている不可抗力の原因には、「火災、洪水、地震、ハリケーン、禁輸措置 およびその他の自然災害」とある。
この定義は、「サービスの不履行、機器または材料の欠陥またはそれらの利用可能化の遅れ、労働争議、ストライキおよび経済的困難」を除外している。

実際には、アストラゼネカの言い分である"不可抗力だった"は認められず、定義に反する。



それにしても、遅れているのはよくない。欧州だけのことではないく、全世界に影響が出る問題である。
そこで、イタリアがその遅延をどうにかしようと立ち上がった。

| Covidワクチンの提供をスピードアップする新しい方法とは

「これが私たちが加速できる方法」

イタリアでファイザーとモデルナの直接生産するという交渉と連絡は数週間続いた。
そして、会社との合意により使用できる2つのプラントが特定された。
今のところ機械を適応させる必要があり、認可が不足しているが、1つはラツィオにあり、もう1つはヴェネトにある。
両方ともイタリア国内生産品として追加されることとなるだろう。


| 実際のイタリアのスキル

複雑なワクチンを製造するには機械操作や生物学的観点からも色々なことを適応させるには、少々の問題があり時間がかかると言われており、即時に稼働し始めるということはないそうだ。
とりわけ、イタリアが産業および輸出の観点から最前線にあるセクターであることは確かだ。
プラントはファイザーとモデルナに一時的に貸与されるべきであるため、認可の問題も出てきた。

目標はもう、そこまできている。

イタリアの要請により、この問題は欧州委員会の議題テーマにも上がった。
欧州委員会は、イタリアでの生産を強化し、各国に広めることを決意した。
これは、過去に研究部門で悪名高い削減が行われたにもかかわらず、イタリアが依然として最高レベルの生産構造を持っていることを示している。

| これまでの副作用の報告

医薬品の安全性を監視し、イタリアでの使用を承認する権限を持つイタリア医薬品庁(Aifa)アイファによると、150万回の投与でわずか7000の副作用が報告されている。
アイファは、基本的にファイザーの初回投与で、ワクチンの安全性についてレポートを公開した。

投与された1,564,090回の投与中、7,337件の副作用報告があった。(100,000件あたり469件)。
報告の92.4%は、注射後の痛み、発熱、倦怠感、筋肉痛などのさほど重大ではない副作用に言及している。
頭痛、めまい、眠気、味覚障害もファイザーで報告された。
モデルナを投与した場合は、吐き気と腹痛の副作用が報告された。

12月27日から1月26日までの期間に、ワクチン接種後の数時間で、13人の死亡例が報告された。
この件について、最も詳細で完全な報告レポートによると、亡くなった13人の直接の死因とワクチン接種とは全く因果関係はなかったということだ。

| 抗COVIDワクチンプログラムの70%をイタリア企業が支えている

Covidワクチン、注射剤を入れるための容器(バイアル)は、ヴェネツィアの会社が製造しているという。
工場フル活動で人員不足により、急遽従業員募集中

地球全体が新型コロナウイルスと戦うためのワクチンを求めている。
その結果、地球全体でワクチン薬を入れるのに不可欠なバイアルも生産量を大幅にアップしていかなければならない。
バイアルが大量に必要だ。

そこで、すべての世界でこの業界(製薬用のガラス容器)の製造を専門とする会社が、今、かなり熱い。

このコロナウイルスワクチンのバイアルの7割は、イタリアに本社を置くステバナートグループがバイアルを製造している。
1949年、最初の会社であるNuovaOmpiは、ジョバンニ・ステヴァナートによってヴェネツィアに設立された。
1959年、同社は現在の本社であるパドヴァにあるピオンビーノデセに移転した。
現社長は創業者の息子のセルジョ・ステヴァナート氏。

パドヴァ県のピオンビーノデセに本社を置き、ブラジル、メキシコ、スロバキア、中国にも工業団地を置くステヴァナート(Stevanato Group)はイタリア北東部の経済的奇跡「ポケット多国籍企業」の元祖と呼ばれる創業70年の老舗企業である。

ステヴァナートグループはイタリアのグローバルカンパ二ーで、製薬業界向けサポートを専門としている企業である。
バイアルや医療容器など、薬の品質と安定性を保護し、温度の変化に耐えることができる中性ホウケイ酸として定義される特殊ガラスを製造している。
これが、抗コビッドワクチンを入れるためのボトル(バイアル)なのである。
ピオンビーノデセにある本社が言うには、「発注元の顧客情報を明かすことはできないが、我がステバナートグループは、ワクチンと治療のためのCovidプログラムに参加している。」と語った。
実際に、この企業はモノボトルとマルチドーズ容器の供給、そして今では注射器も付属して提供している。

*マルチドーズとは、複数回にわたり服用または使用することを目的とし、キャップなどの開封、再封を自由に行うことができる包装形態のもの。


2020年には、ステヴァナートグループは、世界中のさまざまな工場から20億個のバイアルを出荷した。
産業計画では、今年はさらに増加すると予測されている。
グループに雇用されている従業員は世界中に約4,000人いるが、さらに人員を増員させることに投資すると発表している。2020年中に、需要を満たすために約500ユニットを増加した。

今年も成長を続けることを確約されており、抗COVIDワクチンプログラムのニーズに沿って、2023年までの産業計画はすでに作成されており、「メイド・イン・イタリー」の製造部門の好調を浮き彫りにし旋風を巻き起こしている。
近い将来のビジネス信頼度を測定するSMEインデックスでは、1月は55に上昇したとデータによっても証明された。
前月の52ポイントと比較すると、スペインやドイツなど、その他のEU諸国よりも高い数値の上昇で、パンデミックによる先行き真っ暗な経済状態、この暗黒の年でも業績を達成した。

がんばれ、イタリア企業。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ