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ラッシャー貴子|イギリス

コロナ禍の食事情あれこれ

(近所のパブでテイクアウトしたローストビーフ。右上のヨークシャープディングがめちゃくちゃ大きいのはこのパブのスタイル。これだけいろいろなものが食べられて、後片付けはお皿を洗うだけ、というのは、とても魅力的なことです。著者撮影)

3度めのロックダウン進行中のロンドンでは、飲食店はテイクアウトのみ、外食はまったくできない。考えてみると、去年の夏から秋にかけて規制が緩んだ時をのぞいて、ほとんどのご飯を家で食べていることになる。わたしはもともと家で翻訳をしていたので生活自体はコロナ前とあまり変わっていないが、この10か月で食にまつわる事情がずいぶん変わったとは感じている。そこで今回は、ロンドンで経験した食べものにかかわる変化あれこれのお話。

まずは日々の食材、肉や魚、野菜、パンをどこで手に入れるのかという問題。食料の買い出しは外出理由としてはっきり認められているので、スーパーや食料品店は去年からずっと開いている。店内はソーシャルディスタンスを保つために人数制限をしているので、店の前に行列ができることもあるが、中に入れば混み合わずに買い物できるし、最初のロックダウンのような買い占めもなく、ほとんど何でも手に入る。

地元の広場など屋外に店を出すマーケットも開いているところが多いようだ。マーケットには作り手本人がよく売りに来ていて、ちょっとした会話も楽しいので大好きなのだが、家の近くに出ていたマーケットはロックダウン後は残念ながら店舗の数がめっきり減っている。

とはいえ、外出せずに食品を家に届けてもらう方が安心という人は、大手スーパーの宅配サービスを利用している。ネットで買って配達してもらうというサービスは前からあったものの、ロックダウンと同時にその人気が急上昇。配達の予約がなかなか取れずに買い物ができないというスーパーも出ている。最近は日本の食品を扱う食料品店やメーカーも宅配事業に力を入れていて、在英日本人として心強く思っている。和食ブームの影響で醤油、日本酒、味噌、米ぐらいなら店頭に並べているスーパーが増えたとはいえ、こんにゃく、餅、米酢が家に居ながら手に入るのはありがたい。

卸売業者や産地からの食材取り寄せも、コロナ禍で広まったことのひとつだ。わたしがこれを知ったのは、ロックダウンで売り上げが激減した業者を支援しようという動きからだった。日持ちしない生鮮食品を扱う業者の間でもネットで積極的に小売販売を始めるところが増えてきた。産地直送品はもちろん新鮮でおいしいく、レストランやホテルに卸していた業者が扱う食材は質がよい上、珍しい食材が手に入りやすいということで、SNSや口コミで人気が高まった。

わが家も肉、魚、野菜、フルーツなど、何か所かでたまに注文している。どれもまず彩りが鮮やかで見るからに新鮮そう、食べてもやはりおいしい。魚市場から直接届く魚、しっかり熟れて甘いトマトやいちご、みとれるほど立派な葉のついた新鮮なニンジンを味わうと、スーパーの品物には戻れない(戻ることもあるけれど)。質がよい分、値段も少し割高だが、商品をさばくために破格の値段で売ることもあると聞いてからは、手が出ないほど高いのでなければ、社会へのささやかな貢献だと思ってたまに買うようにしている。

たべものの - 2.jpg(卸売業者から買った野菜と果物のお得なセット。真ん中にあるピンク色のフキのようなものがレインボースイスチャード(右下の緑の葉まで含む)。わたしが使っていなかっただけで、それほど珍しい野菜ではない。くせのないほうれん草のような味で、バターで炒めるだけでおいしかった。筆者撮影)

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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