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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

身近に緊迫感を感じるウクライナ戦争とフランスでの生活への影響

パリでのウクライナ反戦デモは、毎週、動員数を増やしています  筆者撮影

2月に入ってから雲行きが怪しくなりはじめ、マクロン大統領がモスクワに出向いて縦長テーブル6メートルの距離をおかれたにもかかわらず、5時間以上にも及ぶブーチン大統領との会談を行なって、約2週間後、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、そろそろ3週間が経とうとしています。まさかの戦争開始に、全世界が驚愕し、フランスのテレビなどの報道も戦争一色になりました。この戦争に関する報道は、地続きのヨーロッパということもあり、いつのまにか、目を離せなくなってくるのですが、この戦争を実況中継するような状態に目を覆いたくなるような惨状に、あらためて、戦争というものは、こんなに残忍なものであるのだ・・と実感しています。

この戦争は、ウクライナが侵攻されているものの、ヨーロッパとの関わりは大きく、一方的に武力で侵略しようとしているロシアの姿勢がヨーロッパの、しいては、国際社会全体として「自由、主権、民主主義」を根底から揺るがすものであり、到底、見逃すことはできない全世界に関わる重大な局面でもあり、こんなことが許されてしまえは、世界の秩序は滅茶苦茶になってしまいます。

この戦争対応におけるウクライナのゼレンスキー大統領の発信などを見ていると、民主主義そのもののようでもあり、また奇しくも彼がマクロン大統領と同い年(同学年)ということもあり、どこかだぶって見えるようなところもあり、ロシアがウクライナを統治したところで、ウクライナはすでに大きく旧ソ連からは脱却しており、ロシアとは兄弟関係のようであるとはいうものの全く違う国であることを感じずにはいられないのも事実です。

このウクライナ戦争に関して、フランス外務省は、フランスはウクライナを全面的に支持する姿勢を表明し、この戦争の経緯やウクライナへの支援について、詳細に説明していますが、この戦争の始まりを「2014年のクリミアとドンバスでウクライナ紛争が始まってから8年、ロシア連邦は2022年2月24日にウクライナへの侵攻を開始した」と始めています。この外務省の文書では、この戦争についての説明を2014年から現在に至る経過を辿って説明していることから、この戦争の火種が長年燻り続けていたことを表しています。

そして、現在のフランスの対応として、「ロシア軍のウクライナ侵攻は、深刻な人道的危機を引き起こし、ロシアの攻撃開始以来、数百万人のウクライナ人が戦闘や爆撃から逃れるために家を離れ、国内またはウクライナの国境外に避難しており、フランスは、人道的緊急事態に対応するため、欧州外務省の危機管理・支援センター(CDCS)を動員し、被災者・難民の支援に当たっています。最も緊急なニーズに応えるため、フランスは1億ユーロを人道的機材(医薬品、人工呼吸器、テント、毛布など)の資金として放出し、ポーランド経由でウクライナ当局、あるいは難民を受け入れている近隣諸国に直接届ける人道的空輸が計画されています」と説明しています。

実際の生活上での影響と身近に迫る恐怖とヨウ素剤の服用法

現実のフランスでの生活では、すでに昨年末から物価高騰を続けていたうえに、ロシアへの経済措置の煽りが燃料費・電気・ガス料金の値上げに拍車がかかり、それに引きずられるようにして、物価も高騰を続けています。昨年末の段階で、すでにフランス政府は、この値上がりに対して、エネルギーチケットやインフレ手当などを国民に支給していたものの、それだけでは到底賄えるものではなく、我が家の電気・ガス料金も昨年比ですでに40%以上、上昇しています。

また、当初から核兵器をちらつかせて脅しにかかっていたプーチン大統領が実際にウクライナ国内の原子力発電所の一部を攻撃したり、占拠したりし始めて以降、実際にこれが核戦争に発展しかねないという危機感が高まってもいます。特に、その原子力発電所攻撃直後のマクロン大統領とプーチン大統領の電話会談の直後に「フランス政府が在ウクライナ・フランス大使館に250万人分のヨウ素剤を手配した」というニュースが報道されてからは、一段とこの核兵器に対する危機感が増し、「被爆した場合のヨウ素剤の服用法」などという報道まで登場し、緊迫感は一段と高まり、たまたま、同じ時期にかかりつけのお医者さんにいつも服用している薬の処方箋をもらいに行った際に、私も「ヨウ素剤は、普通に薬局で買えるのでしょうか?」などと聞く始末。色々とトラブルの絶えない海外生活ではあるものの、まさか自分がヨウ素剤の心配をする日が来るとは、思ってもみませんでした。

フランスでは、この放射能対応のヨウ素剤は、1997年以来、公的機関によって、原子力発電所周辺、半径20キロメートル以内の地域においては、配備されており、放射能にさらされる1時間前、遅くともその後6~12時間以内に服用するように指導されているようですが、彼女(医者)によれば、ヨウ素剤は、イル・ド・フランス(パリを中心とした地域)では、APHP(パリ公立病院連合)がまとめて管理していて、必要な事態になったら、配布される準備がなされているとのこと・・安心なような不安なような答えに「ほ〜〜」となっていると、「でも、そんな事態になったら、私たちは、もうここにはいない・・」と絶望的な一言に返す言葉もありませんでした。

フランスで起こるかもしれないコロナウィルスに関わる二次災害

そして、これは、直接的に関係するとは言えないことではありますが、フランス政府は、これまで続けてきたコロナウィルスのための感染対策としてとってきた「マスク着用義務化」や「ワクチンパスポート」を(一部、公共交通機関や医療施設、高齢者施設を除いて)今週から撤廃しました。この戦争のためにコロナウィルスに関する報道もほとんどシャットアウトになっていたフランスですが、それは、一時は、壊滅的に感染が広がって、「3歩歩けば感染者にあたる」ような酷い状況からは脱し、「どうやら最悪の時は過ぎた」と見られはじめ、「感染状態が改善していけば・・」、「集中治療室の患者数が1,500人を切ったら・・」と慎重にこの感染対策を緩和していくことにしていたにもかかわらず、まだ、自ら定めた基準値に達していないにもかかわらずの撤廃は、この戦争に関する国民の動揺やロシアへの経済措置などがもたらす物価上昇などの反発が高まることが予想されることから、少しでも国民を縛りつけるものを排除しようという焦りが感じられます。

その証拠に、このワクチンパスポートとマスク義務化の撤廃と同時に発表されたのは、80歳以上の人への4回目のワクチン接種の開始(義務ではなく希望者のみ)・・これまで、その有効性と安全性に対して、なかなか踏み切らなかった4回目のワクチン接種を開始することに、どうにもチグハグな感じを拭いきれないのです。

また、悪いことにオミクロンBA2により、これまで減少を続けてきた感染者数が若干、リバウンドを始めたばかり・・本来ならば、まだまだワクチンパスポートもマスク着用義務化には、踏み切っていなかったと思われるだけに、コロナウィルスの再拡大についても、不安材料を増す結果となっています。

日本がますます遠くなった

これまで、パンデミックの中、帰国後の強制隔離や公共交通機関の利用禁止などの日本の厳しい入国制限のために、私は日本への帰国は断念してきました。海外在住者の中には、家族が危篤でも、亡くなっても、日本に帰国することができなかった人が大勢いました。それが、今年2月になって、ようやく日本も少しずつ感染対策のための入国後の隔離などを軽減し始め、フランスから日本への入国にも強制隔離が撤廃されました。ちょうど、日本に行く用事ができて、私は、これ幸いと3月半ばに日本行きのチケットを予約していました。その時点では、まだ入国後の自宅隔離(3日間)が定められていましたが、自宅に3日隔離なら許容範囲内・・と思っていたのです。そして、まもなく、その隔離さえもワクチン3回接種者には、撤廃されたものの、まさかの戦争勃発のためにパリ⇄東京(日本)行きは、欠航となり、キャンセルになってしまいました。変更しようにも、一体、いつになったら運航されるのかもわからず、やむなくキャンセルに。現在、ロンドン便を除いては、ほとんどの便が欠航になっています。

パンデミックのために、長いこと行けなかった日本にようやく行ける!家族にも友人にも会える!と私はワクワクしていました。しばらく留守にするために冷蔵庫を空にし始めていた私は、またせっせと買い物に走ることに・・。スイス連邦政府が、核戦争が発生した場合に住民を保護する実際の対策となる一連のガイドラインをウェブサイトに公開し、スイス国民に向けて「十分な食糧と水を蓄えておくように」と政府が警告したり、他のヨーロッパ諸国でも食糧備蓄のための買い占め対策のために、スーパーマーケットが購入制限をかけ始めるといった事態にまで及んでいるという話題を耳にしながら、フランスでは(私の家の近所では)、そのような備蓄用の食料等の買い溜めをしている様子はないものの、ついつい、保存の効くものも少しは・・などとどこかで思いながら買い物をしたのでした。フランスはもちろんのこと、この戦争に核が使用されることに対しての現実的な対策に入っているという事実が余計に危機を身近に感じさせられるのです。

いずれにしても、これほどにまで本物の戦争というものが悲惨なものであるか、パンデミックで経験したロックダウンとは比べものにならない本当のロックダウンの状況や、爆撃にさらされて、人々が泣き叫ぶ様子などを映画や過去の映像ではなく、現在の映像として報道されていることが、信じ難い気持ちで、どうか、1日も早く、平和が戻ってきますようにと祈るような気持ちで毎日を過ごしています。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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