World Voice

ルワンダのカリツィエから見る日々のあれこれ

大江里佳|ルワンダ

ゲートが鳴る音から見える訪問文化

ルワンダで一番初めに一人暮らししていた家のゲート(筆者撮影)

ルワンダに住み始める6年前、田舎から上京して東京に一人暮らししていた。一人暮らしで日中は仕事のため基本的に家にはいない。仕事のない日も家に篭るタイプではなく外出する事が多く、家に一日中いるということはなかった。そのせいもあるが、家にいる時に誰かが訪ねて来るというシチュエーションはそうそうない。予定していないインターホンが鳴るとビクッとする程で、それでも稀にある営業の人だったりする程度。友人と会う時も、あまり家を訪問しあうということはなく、どこか街のカフェだったり、買い物をするという目的で出かけたりすることが多いのではないだろうか。

そんな生活から一変。ルワンダでは訪問するという行動が日常の生活の中に組み込まれている。

通訳の仕事で日本人の方がルワンダ人によくする質問で、

「お休みの日はなにをしていますか?」とか「好きなことはなんですか?」とかいう質問がある。

この質問に対して、買い物やランチに出かけるとか、映画を見たりスポーツをするとかと同じような感覚で、彼らは「友人や親戚を訪問する」と答える。

おじゃまするという言葉があるように、誰か人の家に訪問するということが基本的な生活の中にある行動ではなく、何か特別なことがあった時にすることのような感覚を持つ私たち日本人にこの答えを伝えた時、一瞬ぽかーんとする表情を何度見ただろうか。私も通訳しながら、この質問に対してこの答えを日本語で答えるとなんだかくすっと笑ってしまう。しかし現地語でいうとしっくりくるのだ。

ましてや、訪問することを伝えずに直撃するなんてことはなかなかないだろう。したときなんかは、歓迎されてるのか不安だし、受け入れる側もそんな準備できていないと困ってしまうだろう。その感覚がここルワンダでは完全に覆される。

産後すぐにコロナ渦で、毎日、一日中家に家族といるようになって、改めて家を訪問してくる人の頻度に気付かされた。

ちなみにルワンダでは3月に初めて感染者が一人確認され、政府が早々に対応。その日のうちに今後の対策についてアナウンスが出され、一週間の間で次々と教会等の施設や学校、空港もクローズされた。そして一週間後には完全にロックダウンが開始。それからおよそ1ヶ月半ロックダウンは続き、現在も夜間の外出が禁止されている。

ルワンダに住み始めた当初一人暮らしの生活だったので、日本人一人だけが住む自分の家にはそれほどお客さんが来るということはなかった。ルワンダ人の友達から、「一軒家に一人で住んでいるなんて、さみしくない?こわくない?」などと聞かれることが多かったが、ルワンダ人宅に遊びに行くようになって、人の出入りの多さを知りそう聞かれる意味を理解した。

またルワンダ人が挨拶のように良く使うフレーズがいろいろあるのだが、その一つにルワンダ人のお宅訪問文化を感じさせるものがある。

「いつ私の家に訪問するの?」「いつあなたの家に訪問していい?」というやつだ。

これは、実際に訪問する約束として日程を決めているというわけではなく、あくまでも日々のコミュニケーションのようなもの。これを知らなかった当初、真面目に空いてる日を伝えて、その日家を掃除して、ご飯も作って準備万端でドキドキして待っていたら、相手は全然覚えていなかったという懐かしい思い出がある。これは別にルワンダ人が約束を守らない人たちということを言っているわけではなく、そんないつに訪問するというようなことを正確に決めなくても良いほど、それが当たり前のように日々の生活の中にあるということだ。

そして現在。ルワンダ人のパートナーと7ヶ月の息子、コロナ禍で休校になった彼の妹も田舎から家にきて、基本4人で暮らす。ルワンダ人と実際に生活するという状況になって、この訪問文化の中に私も暮らす。

私の家にはインターホンがないため、1日家にいるとゲートの扉を叩く音が何度も聞こえてくる。

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きのこを売りに訪問してきた女性(筆者撮影)

頻繁に出入りするのは食べ物を売りにくる人たち。多くの人は売り場をもって販売をするが、中には常連さんのお家を訪問し、売り回る売り子さんもいる。彼らはこの家はたくさん買い物をするというような情報をどこからか仕入れ、始め野菜を売りに来る人だけだったのが、知らぬ間に1日に野菜・果物・魚・きのこのようなバラエティ豊かな売り子さんたちが次々と訪れるようになった。

他にも、水道の水が止まった時に公共水栓から水を運んでくれる人、地域のゴミ収集・セキュリティの料金徴収にくる人、ある時は村長さんがご近所さんの間で問題になってることを話に来ることも。

また生活が苦しくて家庭で十分に食べられない子供がどこからか情報を得て、うちに訪問しにくる。前の日の夜ご飯の残りや朝ごはんのパンとお茶を渡すと、それを食べて家に帰って行く。

これらの訪問者に加えて、もちろんうちの家族の友人や知り合いも、その時々の彼らのタイミングで訪れる。

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コロナ渦前にパートナーのダンスの生徒たちが訪問して来た時(筆者撮影)

一件終わったとやっと座ったら、次の用件が来てまたゲートに戻るというような、慌ただしい毎日に始めは落ち着かないでいたが、今では1日ゲートを叩く音が聞こえないと、今日なんかあった?となにか物足りなくなっている自分がいる。こんな訪問文化が根付くルワンダの日常生活の中からみられるちょっとした面白い出来事をまた少しづつお話ししていきたいと思う。

 

Profile

著者プロフィール
大江里佳

ルワンダキガリ在住。2014年に青年海外協力隊としてルワンダに渡ったことをきっかけに、この土地の人々の生きる力と地域の強い結びつきに惹かれる。帰国後も単独でルワンダに戻り、現地NPO職員を経て、2019年に現地でコンサルタント・現地語通訳等の会社を起業。一方で、現地アフロダンスチームに所属しダンス活動も行う。2018年から同棲を始めたルワンダ人パートナーとの間に子を授かり、2020年に出産。現在家族3人でキガリで暮す。

Webサイト: URUZIGANGO
Twitter: @satoka817

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