World Voice

powerd_by_nw

その日、或る移民が思うアメリカ

中島恒久|アメリカ

大晦日に振り返る2020年

New Year's Eve Firework from Yerba Buena Island. Canon 1Dx, ISO 100. iStock

サンフランシスコはまだ2020年の大晦日。今年最後の記事を書きたいと思います。今年は後厄だったのですが、いつも「大難無く過ごせれば良いなぁ」と思って過ごしていました。小さなトラブルは例年通り色々ありましたが、なんとか無事に一年を終えられそうでホッとしています。

さて、COVID19パンデミック、Black Lives Matter、そしてアメリカ大統領選挙と激動だった2020年を振り返ってみたいと思います。

COVID19パンデミック
2020年の年明けから私の会社ではCOVID19 についてピリピリし始めました。中国や日本へ出張する社員も、その地域からの訪問される方が多いため、オフィスで働く社員達の健康をどうやって守るか?と言う事を早急に検討する必要があったためです。2月の頭には指定地域へ滞在した人間は社内外を問わず、当社オフィスに入所するには14日間の待機期間を必要とする社内ルールを設定。3月16日にカリフォルニア州サンマテオ郡の保健管理官からShelter in Place Orderが発令されたタイミングで、全社員が在宅勤務となりました。

私は2月に日本、3月にドイツに出張に行っていたため、全社員と顔を合わせたのは1月が最後。そして、社内のコミュニケーションはFace to faceからSlackを使ったチャットとZoomでのビデオ会話に変わり、お客さまとのミーティングもビデオ会話になりました。

これまでも対面至上主義者ではありませんでした。しかし、対面でのコミュニケーションの長所を十分認識し、そして駆使してきた身からすると、ビデオ会話という手しか使えなくなってしまうという変化は「ゲームのルールが変わったんだ・・・」と小さくないショックを受けました。今までは手を使っても良かった球技なのに、ある日突然足しか使ってはいけなくなってしまった!みたいな。まぁ、それサッカーなんですが。

このゲームのルールの変化が多くの人に取って、これまでの常識を疑うキッカケになると思っています。そして加速的に色々な価値観や前提条件が変わっていくのだろうなぁ、と思っています。その事の良し悪しを議論する隙が無いと言うのが少しキツイですが、とにかく生き伸びる為にはその新ルールの中で上手くやるしかないというサバイバルの時間が当面続きます。

私の会社はITの専門家です。企業がサバイバルするにはITの活用が不可欠ですから、ある意味ビジネスチャンス到来とも言えます。この強引かつ急速に変わらざるを得ないタイミングでは「出来たら良いな」では無く「今すぐ実現する」マインドセットと能力が必要です。例えばパンデミック以前であれば、人間が対応した方が早い業務については、費用を掛けてまでシステム化するというモチベーションは沸きにくいものでした。しかし、これからの時代は否が応でも人間が関わらずに業務を完了するシステム化を進めなくてはなりません。それを守りの姿勢と考えずに、攻めの姿勢のシステム開発としてお客様と共に困難に打ち勝っていこうと考えるように私の中で変化がありました。それがパンデミックにおける最大の変化でした。

Black Lives Matter
2020年5月25日にジョージ・フロイド氏が白人警察官に頸部を膝で強く押さえつけられた結果死亡した事件を発端として、Black Lives Matter運動が全米的なデモを呼び起こし、また暴動も発生していきました。サンフランシスコでもデモ行進が行われましたし、また毎日のように何かしらの暴動や略奪のニュースがテレビで放送されていました。私の家の近所のドラッグストア、マリファナストアも暴徒に襲われ店が破壊されたのですが、当時は街全体がピリピリとした緊張感に包まれていた様に思います。

rectangle_large_type_2_84122388601ec738bcdd320c6ee67b75.png

※サンフランシスコでのデモの様子:筆者撮影

picture_pc_5647b9a49909f74c4004d2ac1a13ea46.png

※襲撃を受けたサンフランシスコ市内のマリファナストア:筆者撮影

アメリカ市民にとって自分の生命、自由そして財産はアメリカ合衆国憲法修正第14条にて守られるべきものです。しかし、権力の濫用によっては黒人のみならず誰しもがそれらを不当に奪われる可能性があり、BLMはそれに対してのデモであり運動なんだと私は理解しているんですよね。

アメリカ合衆国憲法修正第14条
第1項 合衆国内で生まれまたは合衆国に帰化し、かつ、合衆国の管轄に服する者は、合衆国の市民で あり、かつ、その居住する州の市民である。いかなる州も、合衆国市民の特権または免除を制約する法律 を制定し、または実施してはならない。いかなる州も、法の適正な過程*によらずに、何人からもその生 命、自由または財産を奪ってはならない。いかなる州も、その管轄内にある者に対し法の平等な保護を否 定してはならない。

日本人にとっての痛ましい記憶として、第二次世界大戦時の日系アメリカ人の強制収容があります。私達の同胞はある日突然に自由と財産を奪われ、そして少なくない方が命を落としました。70年代に日系三世の方達が権利回復に立ち上がり、合衆国政府から謝罪と賠償を受けました。彼らが立ち上がったからアメリカ社会における日系人の立場は向上した。その歴史を知る私にとってBLMは全く他人事に思えず、改めて公民権運動、そして日系アメリカ人の歴史について学び直す機会となりました。

※筆者企画のセミナー:2020年度 第10回 JCCNCセミナー『Japanese American Museum of San Jose presents: "What Happened" /日系アメリカ人の歴史』


アメリカ大統領選挙
選挙期間中も選挙後も、日本語でのネット世論でトランプ大統領を支持する方の声を沢山聞きました。他国の大統領選挙にそこまで熱くなるなんて不思議だなぁ、とアメリカ市民としては思いました。

さて、アメリカ国内の報道も街の雰囲気も、来年から新大統領の下でどのようにアメリカを立て直していくか、に既に気持ちは切り替わっている様に感じます。権限の委譲がスムーズに行くのかが見物だなと思っています。しかし、仮にそこにトラブルがあったとしても、4年前には民主党が政権を担っていた訳なので実務の遂行は何とでもなるのだろうな、とも思います。それこそが2大政党制の強みなんですよね。しかし、実際どうなるのかを1月の大統領就任式迄見守りたいと思っています。

来年に向けて
何事もそうかもしれませんが、渦中にいる時には「こんなに大変な事は無い!」と思ってしまいがちです。2020年は間違いなく激動の一年ではありましたが、人類の歴史は激動の連続とも言える訳です。恐らくいつかの未来に現時点では想像も出来ないような大事件や出来事が起きるのでしょう。それが天災や疫病の様な人智を超えた何かの場合は仕方がありませんが、人災では無い事を願いたいです。いや、願うだけでなく人間の良心や善行や知恵によって「大難を小難に。小難を無難に」出来る様に努力していきたいものだな、と思う大晦日の夕方でありました。

 

Profile

著者プロフィール
中島恒久

海外経験ゼロからアメリカ永住権の抽選に応募して一発当選。2004年、25歳の時にアメリカ移住。ジャズベーシストとしての活動の傍ら、寿司屋の下働き、起業、スタートアップ企業、刃物研ぎなどの仕事を転々とした結果ホームレスになりかける。現在は日系IT企業の米国法人にてCOO。サンフランシスコ在住の日系アメリカ人の一世。

Twitter: @carlostsune

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ