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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

集団殺人!ドラッグ!窃盗!コーヒー収穫に潜む黒い影

MattGush-iStock

コロンビアではコーヒーの収穫はすべてが手作業。

熟した実だけをひとつひとつ手摘みで収穫するため、収穫にはたくさんの人手が必要となります。大きな農園だと収穫期には数十人から百人単位で労働者が必要となり、期間労働者たち(コーヒーピッカー)は敷地内に作られた宿舎で寝泊まりしながら働きます。

この時期、コロンビアの多くの地域は収穫期まっさかり。国外や県外からたくさんの人がコーヒー栽培地域に集まっています。そんな中、こんな痛ましい事件が起きました。

コーヒーピッカーの宿舎にて集団殺人。10人死亡。

アンティオキア県の南西部にベタニアというコーヒーの栽培が盛んな自治体があります。

11月22日の明け方、コーヒーピッカーたちが寝泊まりしている宿舎のひと部屋に武装した男達が押し入り、無差別に発砲。7人がその場で死亡し、1人が病院輸送中に死亡、病院で治療をうけていた2人もその日のうちに死亡しました。

事件には麻薬の売買が絡んでいるとみられ、アンティオキア県南西部を牛耳っている麻薬組織『クランデルゴルフォ』による犯行と考えられています。防衛大臣のカルロス・トゥルヒージョ氏は、この地域の組織のトップであるルベンと呼ばれる人物に懸賞金をかけ捜査をすすめています。この事件をうけ、この地域の警備を強化し各農園を捜索したところ、コーヒーピッカーとして働きながらも組織に情報を流していたとされる8人の関係者が逮捕されました。

増え続ける集団殺人

コロンビアでは今年にはいって集団殺人が全国で相次いでいます。今回ベタニアで事件が起きた同じ日にも、カウカ県でも5人が一度に殺される事件が起きました。

中でも私が住んでいるアンティオキア県南西部では今年すでに5件の集団殺人が起こっており、それにより30人の命が奪われています。詳細についての報道はありませんが、聞いた話によるとどうやらほとんどが麻薬の売買が関係しているようです。

ベタニアの集団殺人で名前があがった『クランデルゴルフォ』。この麻薬組織は全国に複数のグループを保有しており、コロンビアで一番大きな違法武装組織でラテンアメリカ最大の麻薬組織とも言われています。これは私が地元の人たちに聞いた話なので真意は定かではありませんが、クランデルゴルフォに属さずにドラッグを販売すると、ライバルとみなされ組織の人間に殺されてしまうのだそうです。今年はコロナウイルスで職を失った人も多く、麻薬売買で生計を立てようとした人が次々と殺されていると聞きました。私の住んでいる集落の最寄りの村でも数ヶ月前に5人のベネズエラ人が立て続けに殺されましたが、彼らも麻薬を販売していたのだそうです。

このクランデルゴルフォは今年の10月初旬に全国各地に一斉に落書きを残し、その存在をアピールしました。私の住んでいる小さな集落にもこの組織が落書きを残していき、住民は不安を感じながら生活しています。

 

コーヒーピッカーと犯罪

残念ながらコーヒーピッカーが犯罪に関わることは毎年よくある事なのです。

コーヒーピッカーという仕事は楽な仕事ではない上に給料も歩合制かつとても安いため、好まれる仕事ではありません。もちろん、その仕事が好きで働いている人もたくさんいますが、背景に様々な問題を抱えている人も少なからずいるのが事実です。

前科があり職に就けない人、精神に問題を抱えている人、そもそも盗み目的な人...。そんな人たちを含んだ労働者たちが収穫シーズンになると8万人も押し寄せてくるので、やはり毎年何かしらのトラブルは必ず起こります。

政府もそれは十分に理解しており、前回のブログで紹介した「収穫計画」にも防犯対策が盛り込まれています。警察を増やしたり、ヘリコプターやドローンを飛ばしてパトロールしたりと様々な対策を講じてはいますが、犯罪者側もまたそれをふまえた上で計画をねっています。なんといっても麻薬販売人にとって外部からやってくる労働者は「新規のお客さん」を増やす絶好の機会。宿舎で麻薬の売買が行われることは全く珍しくありません。また働きながら農園の構造やセキュリティ情報を外にいる仲間に知らせ、深夜に泥棒にはいることもあります。うちの集落のある住民も、昔はコーヒーを栽培していたそうですが、この手口でコーヒー豆の倉庫の場所を外部に知られてしまい、保管していたコーヒーをすべて盗まれ破綻してしまったそうです。農園内だけでなく、コーヒー栽培が盛んな地域では収穫期になると農園でなくても窃盗が多発する傾向にあります。先週村の散髪屋を訪れた際、前はあったはずの液晶テレビがなくなっていました。オーナーに話を聞くとどうやら明け方にシャッターの鍵を壊され泥棒に持っていかれてしまったそうなのです。その隣の店にも鍵を壊した跡があり、同様にわずか1ブロック離れたパン屋や歯医者にも先月泥棒がはいったと教えてくれました。警察に助けを求めたそうですが、コーヒーピッカーがひっきりなしに出入りしているこの時期は捜査も難しく、特に何もしてくれないそうです。

コーヒーピッカーのほとんどが真面目で働き者ですが、ほんの一部の悪い人や麻薬組織のせいでこの時期村人は安心して過ごす事ができません。パンデミック、武装組織との衝突、ベネズエラからの移民...気の毒になるほど今年は治安に関連する問題が山積みになっているコロンビア。この様子では「今年の収穫は成功だった」と胸を張って言う事はできなさそうです。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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