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悠久のメソポタミア、イラクでの日々から

牧野アンドレ|イラク

3回目のワクチン接種とオミクロン株流行が始まったイラク

©iStock-beast01

私の住むイラク北部クルド自治区のアルビルは今週、ずっと雨の日が続いていました。

この記事を執筆している土曜日の朝は久しぶりに晴れ間が見えており、年中晴れのイラクにいて新鮮な気持ちになっています。

雨季のはじめは雨も少なく、私の周りの人たちも来夏の水不足を心配していましたが、今年は大雨が原因で起きた洪水を除けば今のところいい雨量を記録しています。今週は15℃を超える暖かい日が続きましたが来週からは10℃も下回る予報も出ており、まだまだ冬も続く模様です。

   

ワクチンのブースター接種とオミクロン株の流行

冬の天気が続くアルビルですが、そんな中で先日3回目となるブースターワクチンを接種してきました。

過去の記事でも書きましたが、イラクでの仕事柄私は優先接種の対象となっており、昨年の5月に2回目のワクチン接種を受けていました。

今回、昨年12月にクルド自治政府の方針で「2回目の接種から6ヵ月以上の高齢者、医療従事者、基礎疾患を持つ者」に対して3回目の接種が開始されました。

1、2回目の接種は当時COVAXのスキームで届けられていたアストラゼネカ製でしたが、今回3回目の接種ではイラク国内で主流となっているファイザー製のワクチンを受けました。

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©筆者友人撮影

1回目は少し身体が重くなる感じがあるだけ、2回目に関しては接種した腕が重くなるだけでした。

3回目の接種、しかも今回は「混合接種」となり周りでも受けている人もほとんど知らなかったので心配でしたが、2回目よりさらに副反応はなく少し拍子抜けな感じでした。

一緒にワクチン接種を受けてきた現地の同僚たち、中でも過去2回では点滴を受けないといけないくらいの副反応があった人も「今回は何もない」と話していました。

私の暮らすクルド自治区ですが、未だにワクチン接種は進んでいない感があります。未だに反ワクチン感情は根深く(中にはどうしようもない偽情報も含まれています)、同僚たちの親族でも彼らがワクチンを接種したという事実を知っても受けたくないという人が多いと聞きます。

しかしこの状況を受け、クルド自治政府も動き出しました。

昨年の終わりに、今月20日までに公務員のコロナワクチン接種を義務化し違反すれば最悪失職する可能性にも言及をしています。

全職業の内で1/3が公務員であるクルド自治区ではこの効果は高く、コロナ接種を行う病院はこの一ヵ月ずっと長蛇の列でした。

イラク全土でのコロナのワクチン接種状況ですが、イラク保健省によると全成人人口の1/3を少し超えたくらいの接種が完了しているとのことです。

イラクは全人口の半数近くが18歳以下という若い国ですので、彼らを含めると15%にも届かないことになります。

そんな中でこの一週間で、イラクは新たに新型コロナ流行第四波に入ったとみられています。

スクリーンショット 2022-01-15 181153.png

出典:JHU CSSE COVID-19 Data

昨年夏のデルタ株の流行で一日に1万人を超える新規感染者も確認されたイラクですが、その後は12月末にかけて漸減。先々週には一日に全土で200人台という2020年の感染初期の頃の水準にまで減りました。

しかし1月1週目に他国からは遅れてイラクでも感染力の高いオミクロン株の流行が確認され、今週では新規感染者が先週比で10倍近くに増えてきています。

私の暮らすクルド自治区も感染の拡大を受け、2月からワクチン接種証明書を持たない者の公機関への出入り、レストランや商業施設への入店を禁ずる措置を発表しています。自治政府としても市民にワクチン接種を受けるよう広報を強めています。

またクルド自治区以外の中央政府地域でも、公機関の職員数を普段の半数にして今後しばらく業務を行うと発表しています。

幸い、「毒性が低い」と言われるオミクロン株の特徴からか感染者が増えている傍らでコロナによる死者の大幅な増加は見られていません。イラク全土での死者は一日10名という水準が続いています。これはイラクの人口が相対的に若く、症状が悪化しにくいということが関連しているのかもしれません。

過去の記事でも紹介しましたが、イラクの新型コロナウイルスの流行は一昨年の8月頃に「終わって」います。

ロックダウンが続いた後に経済封鎖による死者を防ぐことの方が優先され、感染者が増大する中であってもコロナ以前の市民生活が戻っていました。

なので今回のオミクロン株の流行が本格的に起きたとして、政府が注意喚起や新たな制限措置を講じたとしてもほとんど市民生活が変わることはないでしょう。クルド自治政府が発表した2月以降の措置も、次第に有名無実化されていくものと私は考えます。

今回の感染第四波を乗り越え、イラクでも本当の意味でエンデミックに向かうことを祈っています。

 

Profile

著者プロフィール
牧野アンドレ

イラク・アルビル在住のNGO職員。静岡県浜松市出身。日独ハーフ。2015年にドイツで「難民危機」を目撃し、人道支援を志す。これまでにギリシャ、ヨルダン、日本などで人道支援・難民支援の現場を経験。サセックス大学移民学修士。

個人ブログ:Co-魂ブログ

Twitter:@andre_makino

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