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悠久のメソポタミア、イラクでの日々から

牧野アンドレ|イラク

イラクで過ごすラマダンの日々

イラク北東部スレイマニアの市場 ©筆者撮影

4月13日から、イスラム教の世界ではラマダン(断食月)が始まっています。
日の出から日の入りまで、イスラム教徒の人たちは一切の食事と水を断ち、他のイラクの街に比べて比較的リベラルなアルビルもいつもより宗教色の強い日々が続きます。

私自身はムスリムではないのですが、日ごろから健康のためにプチ断食をよくしているのでこの時期は夕食だけを食べる一日一食生活を送り少しでも地元の人に近い生活を送ろうと思っています。

仕事時間、街の賑わい

ラマダン期間中、街の賑わう時間がいつもより少し変わります。

まず人によっては飲み食いのできる夜に活動時間のメインが移ります。お昼過ぎまで寝て、日没後にイフタール(断食明けの食事)を食べ、そのまま一晩中友人や家族と過ごし夜明け前にまた食事をとり寝るという生活をとる人もいます。

そのせいか、いつもは渋滞気味の朝の時間帯も道路はがらがら。
その代わりイフタール直前の夕方5時から6時30分くらいまでは帰宅をする人で道はごった返しています。
そしてイフタールが食べられている6時45分から7時30くらいまでは道路はまたまたがらがらになり、タクシーを捕まえるのも一苦労になります。

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イフタール後のアルビル市内の繁華街の様子 ©筆者撮影

ラマダン期間中は私の所属組織の仕事時間も変わっています。
ランチ休憩がなくなった分とさらに1時間業務時間が短くなり、合計2時間いつより仕事時間が短くなります。

そのため午後1時には仕事が終わり家に着いてしまうので、時間の有効な使い方を考えてしまいます。

ただしラマダンといっても、日中レストランは開いているところも少なくないです。
アルビルはキリスト教徒の住民も多く、断食をしない彼らは普通にレストランに行っては食事をとっています。


イフタールのご飯


この時期、いつも以上に夕ご飯へと招待を受ける機会が増えます。
ラマダンが始まり2週間が経ちましたが、すでに6回も友人や同僚からイフタールに誘われています。

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カンガルと卵の炒め物(左)とビリヤニ(右) ©筆者撮影

同僚の家ではカンガルというクルディスタン原産の山菜の炒め物やビリヤニを食べ、別の友人の家ではクッペというコロッケのようなシリア料理をいただきました。

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シリア風コロッケのクッペ ©筆者撮影

たらふくご飯を食べた後は甘いお菓子を食べながらお茶を飲み、水たばこを吸って語らいます。
この至福の時間は、一日ご飯を我慢したからこそ味わえるものだと実感しています。

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チーズの入った甘いお菓子。これにさらに蜜をかけて食べる ©筆者撮影

ちなみにラマダン期には瘦せるという人もいれば、同じくらい太るという人もいます。
それは恐らく食後の甘いものと砂糖たっぷりのお茶の量の差だろうと勝手に想像しています。

ラマダンはイスラム教徒にとって最も神聖な月

ここまで、ラマダン期間におけるイラクの生活を紹介してきましたが、忘れてはならないのはラマダンはムスリムの人々にとって最も神聖な月であるということです。

人々は喜捨(ザカート)に励み、家族や周りの人との時間をいつも以上に大切にします。
よく「ラマダン期にはテロが増加する」や「交通事故が増える(こちらは実はあってます)」とも言われネガティブに捉えられることも多いラマダンですが、実際には信仰の強さと人々の温かさに触れられる、まさに祝祭の月であると言えます。

 

Profile

著者プロフィール
牧野アンドレ

イラク・アルビル在住のNGO職員。静岡県浜松市出身。日独ハーフ。2015年にドイツで「難民危機」を目撃し、人道支援を志す。これまでにギリシャ、ヨルダン、日本などで人道支援・難民支援の現場を経験。サセックス大学移民学修士。

個人ブログ:Co-魂ブログ

Twitter:@andre_makino

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