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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

人生初のウィンブルドン観戦でテニス愛に引き込まれる

 続いては、男子シングルスのジョコビッチ対ホルカシュの試合。世界のジョコビッチのプレーをこの目で観る日が来るとは! 

 スターの登場に興奮はしたけれど、試合の方はこのあたりから少し落ち着いて観られるようになった。その場にいると、ボールを打つ音が体に響いてやっぱり迫力がある。大事なゲームでサーブを待つ時には、自分の髪が風に揺れるのさえ選手の邪魔になるんじゃないかと緊張した。

 コートを走り回る若者、ボールボーイとボールガールの献身的な働きにも、テレビで観る以上に感激した。ボールがコートに転がると火事でも見つけたかのように一目散に拾いに行き、決まった動きに従って仲間に転がしたり選手に渡したりする。その後は何もなかったという顔に一瞬で戻って姿勢よくすっと立つ。きびきびした動きのひとつひとつが効率的で、しかも美しい。涙ぐましいほど健気に働く様子から、テニスに身を捧げる喜びのようなものを感じた(最近は彼らを男女合わせて「ボールパーソン」ともいうけれど、英語でもまだ両方の呼び方が混在している)。

ウィンブルドン選手権の公式インスタグラム投稿より会場の様子。どこも色とりどりの花やしっとりした緑で飾られていて、気持ちが華やぐ。花を見て歩くだけでも見応えがあって夏を満喫できそうだ。ウィンブルドンにいるのが楽しいという気持ちは、こんなところからも湧き上がるのかもしれない。

 この試合は時間切れで前日から持ち越されたもので、前日に2セットを取っていたジョコビッチがすぐに決着をつけるのかと思いきや、意外に長引いて、手に汗握る接戦の末にジョコビッチが勝ち残った。

 すぐに続いて女子シングルスの試合があったけれど、ここでランチに行ってみることにした。マイケルの名前でレストランの予約も入っていたのだ。ずいぶん数があるレストランのうち指定されたところに行くと、ランチ時間は終わっていた(考えてみればもう4時だったので当然だ。ジョコビッチに夢中になりすぎた!)。けれど、係の方の機転でアフタヌーンティーに振り替えてもらえて一件落着。この日接したスタッフは全員、フレンドリーで親切だった。

ウィンブルドン - 3.jpeg

ウィンブルドンのアフタヌーンティーで特筆すべきは、最初にストロベリー&クリームが供されたことだ。英国では今が旬のイチゴに、泡立てていない生クリームをかけただけのシンプルな食べもので、これとピムスというさわやかなカクテルはウィンブルドン名物で、どちらも屋台で飛ぶように売れていた。プログラムによると、昨年の大会中に消費されたイチゴは50トン。トンってイチゴを計る単位だったっけ?笑 筆者撮影

 試合も気になったけれど、席を立ったついでに、せっかくなので会場を歩いてみたかった。コートの外では、相変わらず大勢のファンが屋台に並んだり、ベンチに腰かけたり、ただ歩き回ったりして、テニスの聖地ウィンブルドンでの1日を楽しんでいた。世界中の言葉に混じって日本語もずいぶん聞こえたし、日本のテレビクルーも見かけた(マイクを持ったレポーターの顔に見覚えがなくて残念!)。

 グッズを買うショップは入場制限をするほど大混雑していたけれど、ウィンブルドンのロゴがついたショッピングバッグを持って歩く人たちは満足げに見えた。人気商品のロゴ入りタオルは、昨年は54,164枚売れたそうだ(わたしも日本の家族に買ったことがある)。

 18面あるコートのうち、メインのセンターコート(約1万5000人収容の)とNo.1コート以外は、観客席がずいぶん小さくて驚いた。中には席が3列ぐらいしかないものもある。そういうコートでは注目される試合はあまりないとはいえ、低いフェンス越しに試合をのぞいている観客もずいぶんいて、なんだか大らかなのだった。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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